4月7日(月)「金正恩が整形手術を禁止…北朝鮮中の若者の反発買う」
金正恩が整形外科法という奇妙な法律を定めた。韓国では二重手術が普通に受け入れられているが、韓流の影響もあって、北朝鮮でも二重手術を希望する女性が多い。脱北女性の中にも平壌で二重手術をしたという人がいる。もっとも、北朝鮮にいわゆる整形外科はなく、外科医が秘密裏に施術をして小遣い稼ぎしているのが現状だ。従って、高度な整形技術を誇る韓国とは違って、失敗例も相当多いと見られる。それでも美を追求する若い女性の二重手術願望は高い。それなのに金正恩が禁止する法律を作ったのだ。父・金正日の時代には、赤いスパッツが流行した際に「赤い色は欲情をそそるから、女性は赤いズボンを履くな」とお触れを出したり、スカートをはいて自転車に乗る姿を見ては何を思ったか「女性は自転車に乗るな」と言いだしたりしたが、今回の金正恩の二重手術禁止令も、独裁者の思い付きで若者の欲求を抑えつけるものであり、醜態以外の何物でもない。
4月8日(火)「脱北者の家族に罠を仕掛ける保衛部…あの手この手で金儲け?!」
現在、韓国には3万4千人の脱北者が暮らしているが、北朝鮮に残された家族が、最近、窮地に追いやられている。韓国に暮らすある脱北者によれば、自分の兄弟が最近、保衛部に逮捕されたという。自分は送金した覚えがないのに、ブローカーに扮した国家保衛省要員が「南にいる家族からの送金があった」と騙し、これに乗せられた末、逮捕されたのだ。これは、金正恩が最近、外部と何らかの関係のある勢力を徹底的に取り締まれという指示を下したことと関係があると考えられる。しかし、より直接的には、北朝鮮の国家保衛省も最近は賄賂などの実入りが少ないため、このように行方不明住民の家族に罠を仕掛け、これに引っかかった家族に財産があれば金を巻き上げることが目的だと考えられる。金を巻き上げ続けることのできる家はそのまま押さえておき、金のない家の者は逮捕する。さらに逮捕された家族を救うためとして、国外に暮らす脱北者に送金させるという、実に悪辣な金儲けが横行しているのだ。
4月9日(水)「金正恩を狙う勢力に最適のアイディアを提供…バカな首領様」
韓国の尹錫悦大統領が弾劾され罷免された4月4日、金正恩はゲリラ部隊の訓練現場を訪問し、そこでの信じがたい場面を公開した。枯草を身にまとい、顔もわからない軍人と対面したのだ。趣旨としては、ウクライナ戦で学んだドローン戦への対抗策として、身を隠したゲリラ部隊を紹介するものだった。しかし、ドローンは人の姿を見て攻撃するのではなく、熱感知で攻撃対象を判断するものなので、枯草で体を覆うことには意味がない。それどころか、このように武器を持つ者が擬態して身を隠せば攻撃対象を撃ち殺すことができるということであり、金正恩を狙う者がこの手を使う可能性が十分に考えられる。金正恩は、反体制勢力にヒントを与えたことに気づかないのか。一方で、労働新聞は尹錫悦弾劾を短く伝えるにとどまった。朴槿恵弾劾の時には大々的に騒ぎ立てていた。しかし、それによって人民が「罪を犯した指導者は弾劾することができる、金正恩は弾劾されるべきではないのか」と考えるに至ったのだ。これに危機感を覚え、今回は弾劾のニュースで人民を刺激しないようにしたものと思われる。それにしても、このように刻々と変化し、脅威を増し、かつ分裂の様相を呈している北朝鮮に対し、韓国では国家情報院も国防部もあまりに無関心なのではないか。せめて我々国民が北を注視する必要があると考える。
4月10日(木)「北朝鮮経済は最悪のシナリオに突入…揺れる韓半島の運命は?!」
経済基盤の脆弱な金正恩政権が、最近、貨幣を増発して市場に流したという。物価の高騰を勘案して、増発した貨幣で公務員の月給を10倍に上げたというのだ。しかし、少し前まで1ドルが8千ウォンだったものが、今では3万ウオンに跳ね上がった。給料を上げても物価に追い付かないだけでなく、北朝鮮ウォンの価値は地に落ちてしまった。お金はもはや紙くずとなり、貨幣改革を再び断行せざるを得なくなる。この状況を目の当たりにした北朝鮮の幹部連中は、我が国ももうおしまいだと囁きあっているという。現在、北朝鮮の経済政策の責任者は朴テソンだが、彼は経済の専門家でも何でもない。そのうえ金正恩は20×10(1年で20の工場を10年間建設することで人民の生活を向上させる)政策などという非現実的な政策を喧伝しており、もはや北朝鮮は崩壊寸前である。こんな重大な時期に韓国では大統領が弾劾され、次期大統領選で浮ついた雰囲気の中で、有効な対応ができずにいるが、こんな時こそ我々は状況を注視しなければなるまい。
4月11日(金)「金正恩の兄・金正哲ついに登場…後継者問題と関係するか?」
これまで人民にその存在自体知られていなかった金正恩の実兄・金正哲(キム・ジョンチョル)が、ついに登場した。金日成総合大学の歴史学術誌に肩書無しの実名で、父である金正日の核武装を称える論文を掲載したのだ。北朝鮮では後継者体制を確立するために、後継者自身の兄弟は存在を伏せられたり消されたりするため、金正哲がこの時期に突然登場したことは、後継者問題と何らかの関係があると考えざるを得ない。金正哲は金正恩の兄なので、後継者序列としては上だったが、性格的におとなしく、音楽にしか関心がないことから、後継者を弟に譲った。しかし、金正恩は精神的に不安定であり、すぐかっとなって人を平気で殺す、問題の多い人間だ。その金正恩が政権を取って10年以上が経った今、金正哲が父を称える文章を実名で公表するということはただ事ではない。しかも金正哲が勝手にそんな文章を公表することはありえず、必ずや金正恩のOKサインがあったはずだ。つまり、金正恩は意図的に兄の存在を人民に知らしめたのである。その理由は、金正恩の後継者として息子が病弱であったり幼すぎたり、また側室の子であるといろいろ問題が起こり得るため、いまひとつ確定できないこと、さらに自身の健康不安により、いつ不測の事態が起こるかもしれないという不安があるためであろう。そんな不測の事態が起きた際、いったん兄に引き継いでもらう可能性を考慮し始めたのではないか。金正哲に息子がいなければ、彼が臨時に後継者の地位に就き、金正恩の息子が十分に成長した暁には息子に後継者を譲るという、いわばプランBを考えているのではないだろうか。金一族としては金正日の腹違いの弟、金正恩の叔父に当たる金平日がいるが、彼が後継者となった場合、金正恩一家は無事ではいられないはずだ。頼れるのは兄の金正哲か妹の金与正だけなのだ。いずれにせよ、金正哲が現れたことの真意は今後の情勢を見なければ分からないが、金王朝の後継者問題と関係があることだけは確かだと言えよう。
4月12日(土)「脱北者が脱北者から金を騙し取る怪しからん犯罪が横行」
脱北者が脱北者から金を騙し取るというケースがある。韓国に家族や知人がいるわけでもなく、社会基盤もない脱北者は詐欺のターゲットになりやすい。その上、脱北者の事情をよく知る脱北者が同じ脱北者に詐欺を働くのだ。ハン・ピルスという脱北者は、ニセの会社を立ち上げて、同じ脱北者数百人に詐欺を働き、何百億ウォンを持ち逃げした。特に、朝鮮戦争で北朝鮮に連行された韓国軍捕虜とその家族は政府からまとまった金額を支給されるため、これが集中的に狙われた。ハン・ピルスは逃亡途上で捕まったが、持ち逃げした金がどこにあるのか分かっていない。さらにチョン・ミョンチョルという脱北者は、タイに拠点を置き、北にいる家族に会わせてやる、送金してやると言って、韓国にいるお年寄りたちから総額1億5千万ウォンを騙し取った。お年寄りたちは家族に一目会いたい一心でなけなしの預金を引き出したり借金したりして作った金を奪われたうえ、家族にも会えず、住む家まで失った人もいる。詐欺師たちはインターポールの捜査のおかげで捕らえられ、韓国に送還されたが、現在の韓国では処罰が甘く、被害者への補償もほとんど行われない。このような破廉恥犯は厳罰に処すことができるよう法整備を進めるべきである。脱北者の皆さんも、詐欺に遭わないことが韓国定着のための最重要点だと考えて、徹底的に自己防衛してほしい。
4月13日(日)「北朝鮮軍約10名が軍事分界線を侵犯後退却…集団脱北の可能性も」
今月8日、10人ほどの北朝鮮兵士が軍事分界線(MDL)を侵犯したため、韓国軍が警告射撃を行い北側へ退却させたというニュースが報じられた。報道では現在韓国の政治情勢が揺れている隙に乗じた挑発と見られると分析しているが、白昼堂々と10人もの団体で軍事分界線に侵入するというのは、軍事目的というより、何らかの問題があったか、集団脱北の可能性もあるのではないだろうか。2023年10月にも北朝鮮兵士30人ほどが南下してきたため銃撃を行って退却させたというが、韓国軍の中に、北からの集団脱北を受け入れた場合、民主党に不利だと考えてとにかく追い返そうという雰囲気があるのではないか。現在、南北間の経済的・社会的格差は歴然としており、休戦ラインの最前線にはある程度以上の家庭の子弟が配置されるため、考え方もある程度開けており、チャンスがあれば南へ行きたいと考えている兵士は多いものと思われる。挑発するなら闇夜に紛れて来るはずであり、そうでない場合は一定のマニュアルに従って、脱北の意思があるのかどうかを確認するようにすべきではないだろうか。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)