2月24日(月)「平壌の高層マンションで凍死続出!」
今年の冬は例年より寒さが厳しいが、韓国と比べても気温が5℃から10℃低い北朝鮮の寒さはいかほどだろうか。そんな中で、平壌と、昨年水害を被った地域の寒さによる被害が酷いと伝えられている。平壌には新築の高層マンションが林立しているが、電気不足と上下水道の未整備のため、上層階に住む人は階段を使って水を運び上げなければならない。従って、高齢者や病人は、地上に降りることもできず凍死してしまうのだ。さらに新義州(シニジュ)などの水害に遭った地域には、にわか作りで家々を立てたものの、平壌よりさらに北に位置するうえ、電気・水道はもちろん暖を取る燃料も食糧もないため、その悲惨さは想像を絶する。

2月25日(火)「先代を否定した不敬行為を反省?先代への敬称と記念日を復活?!」
祖父・金日成(キム・イルソン)と父・金正日(キム・ジョンイル)の存在を消し去ろうとしてきたことに対する、人民や周囲からの非難の声が、金正恩(キム・ジョンウン)の耳に届いたのだろうか。金正恩が、一度消し去った祖父と父を称える表現や記念日を復活するという奇策に出ている。金日成の誕生日の「太陽節」、金正日の誕生日の「光明星節」、そして金日成が生まれた1912年4月15日を起点とする「主体〇年」という年号を、このたび復活させた。もともと金正恩は、ヨーロッパ留学経験もある自分の方が、祖父や父より優れた指導者になれると勘違いしていた。しかし、未熟さのためなかなかうまくいかなかった。ところが、2018年にトランプ大統領とさしで交渉し、習近平やプーチンとも会談を行ったことで、自分は先代を超える英雄になれると、またまた勘違いした。しかし結局は失敗に終わった。人民たちも、海外経験のある金正恩にはもう少し自由で開放的な施策を期待したが、実際は先代よりはるかに残忍で暴力的であることに失望した。幹部たちは幹部たちで、金正日時代には「先代の金日成の時はよかったのに」とこぼし、金正恩の時代になると「父の金正日の方がましだった」と嘆いている。父が建てた祖国統一三大憲章記念塔を粉々に爆破し、叔父の張成澤(チャン・ソンテク)を無慈悲に殺し、祖父から引き継いだ対南革命路線を全面的に廃止して、大韓民国は敵対国であり韓国人は同族でも何でもなく征伐すべき敵だと規定した。このような未熟な判断と失策に対する積もり積もった不平不満がくすぶっているのだ。これを感じ取った金正恩が、先代への敬称・記念日復を活せざるを得なかったものと思われる。

2月26日(水)「金正恩、冷凍保存の準備に取り掛かる?」
秦の始皇帝をはじめ、世界史的に独裁者は永遠の命を手に入れたがるものだ。スターリンも毛沢東も永遠の命の代わりに防腐処理され保存された。金日成と金正日の遺体は「錦繍山(クムスサン)太陽宮殿」に永久保存されている。金父子は生前、自らの永遠の命のため「万寿無彊研究所」を設立し、北朝鮮の党幹部専用病院である烽火診療所の医師らを朝鮮赤十字病院に派遣して、人民を実験台に健康長寿の薬の開発に取り組ませた。では、金正恩はどうか。その不健康な体にはありとあらゆる治療を試みたが、中国の国家安全部の分析によれば余命2、3年だという。40代で死期の迫る金正恩は、生きたままの冷凍保存を望んでいるらしく、人間冷凍プロジェクトが始動したようなのだ。金正恩は、自分の病気を治療できる医療技術が完成した暁に、解凍して生き返り、永遠に独裁者として君臨する、そんなことを夢見ているものと思われる。

2月27日(木)「1年間姿を見せないファーストレディ李雪主、玄松月はどういう存在?」
主要行事にいつも同行していた李雪主(リ・ソルチュ)が1年間姿を見せていない。その原因については色々な憶測が飛び交っている。李雪主には金ジュエのほかに、男の子が2人いるものの心身の健康に問題があるようで、4人目の子を妊娠した可能性があり、あるいは逆に金正恩に離婚された可能性があるだろう。最近の公式行事では、金正恩の周りに姿を見せるのは玄松月(ヒョン・ソンウォル)である。2月24日の金日成政治大学訪問時にも玄松月が同行した。去年夏、中朝国境の水害の際、新義州を視察するためボートに乗った金正恩に同行したのも玄松月だった。これは玄松月の生んだ男の子がいるとすれば、その子を後継者に据えるための準備作業なのではないか。三代にわたる金一族の女性関係はみな複雑で、その女性同士の権力争いもまた凄まじいものだった。今、それが本格化し始めているのかもしれない。

2月28日(金)「ウクライナ軍が北朝鮮の特殊部隊に投降促す心理戦?」
ウクライナのメディアによれば、北朝鮮軍が4日前からクルスクでウクライナ軍に包囲され、補給も受けられず動けなくなっているという。彼らを救出するためにロシア軍も手を尽くしているが、ウクライナ軍が熱感知装置やクラスター爆弾などを動員して、これを阻止しているという。これまでウクライナ軍は、北朝鮮軍の参戦に対して、片っ端からドローンで狙い撃ちしたり、ストーム・シェイドで一網打尽にするなど、攻撃の手を緩めなかった。しかし、ここへ来て、停戦後の国家再建、国際関係修復を視野に入れると、韓国との関係を良好に保つことを考える必要があるため、北朝鮮軍を大量に投降させて韓国に引き渡すという戦略に出る可能性もあるのではないか。そのためウクライナが対北朝鮮軍心理戦に入ったのではないだろうか。

3月1日(土)「韓国の政治的混乱利用し、北朝鮮⇒李在明が総動員を指令」
韓国は現在、大統領も国務総理も弾劾訴追され、国政が麻痺状態となっている。この機に乗じるかのように、大統領室上空にドローンが現れ、「尹錫悦弾劾だけが民衆の生きる道だ」「ろうそく抗争か、戦争宣布か」などと書かれたビラを撒いていった。金正恩は「南北はもはや同族ではない」などと言いながら、韓国が政治的混乱に陥るや、積極介入を試みているのだ。韓国人の無ビザ訪問を始めた中国では、瀋陽の北朝鮮領事館に韓国人が押し寄せている。これは、尹錫悦弾劾への動力を強化するために、民労総などの左派団体に対する再教育が行われているものと見られる。また、現在、民主党党首の李在明(イ・ジェミョン)が、民主党をはじめとする野党勢力および韓国内のあらゆる左派団体に総動員をかけて、尹錫悦を弾劾しようと呼びかけている。これも、元をただせば北朝鮮からの指令に従う動きであろう。

3月2日(日)「異色の北朝鮮工作員ムハマド・カンス氏が死去」
異色の北朝鮮工作員として知られたムハマド・カンス(本名:鄭守一)氏が亡くなった。彼は中国生まれの朝鮮族で、中国からアフリカに研究生および大使館員として派遣されたあと、北朝鮮に帰化して平壌外国語大学の東方学部の教授となった。その後、アラブ系フィリピン人に偽装したスパイとして韓国に送り込まれた。しかし、スパイとしての活動はほとんど見られず、大学教員として韓国社会に溶け込み、転向後は中東の歴史・文化に精通する専門家として韓国内でも高く評価される人だった。享年91歳。南派スパイであっても、自由民主主義の素晴らしさに気づきいて転向すれば、豊かな人生を送ることができる懐の深さが自由韓国の良いところである。現役の南派スパイ諸君も、鄭守一氏の後を追う道を考えてみてはどうだろうか。

「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)