3月31日(月)「中国からの脱北者強制送還中断の長期化…脱出女性労働者急増」
現在、中国国内に北朝鮮人労働者が約14万人いると言われる。コロナ禍で数百人が死亡し、コロナの後、約3万人が中国内に止め置かれた後、北朝鮮に送還されたとされる。ところが、このところの中朝間の関係悪化により、北朝鮮のビザを持つ者は北朝鮮に送り返し、ビザを持たない脱北者の強制送還が行われなくなった。この脱北者の強制送還中止が長期化するに伴い、中国にいる脱北者の間で、うまくすれば中国に居続けたり、韓国に行くこともできるのではないかという希望が生じている。そのため、丹東、瀋陽、吉林、和林、琿春などに立地する工場で働く北朝鮮の女性たちの脱走が相次いでいる。工場の管理者をしていた20代の女性が多く、中には脱走に失敗して工場内の拘禁施設に捕らえられているケースもあるという。彼ら労働者は、一旦はビザを取得して中国内で働いていたが、そこから脱走すれば脱北者となる。賃金搾取、性被害、暴力、拷問など、劣悪な環境で働かされていた北朝鮮女性労働者が、過去には脱走したところで捕まれば北朝鮮へ、そして収容所へ送られるため躊躇っていたけれど、中国が強制送還を中止していることで、もはや躊躇う必要がなくなったのだ。今後、さらに脱走者が増加した場合、中国政府がどう対応するのか、また韓国政府が彼らをどう受け入れるのか、注視していきたい。

4月1日(火)「大洪水で被災した中朝国境都市が統制不能、恐怖の暗黒都市に!」
昨年夏、新義州(シニジュ)、江界(カンゲ)、満浦(マンポ)など鴨緑江(アムノッカン)流域で大水害が起こり、金正恩(キム・ジョンウン)が慰問パフォーマンスをしたことが記憶に新しいが、その後、それらの地域はどうなったか。新義州には水害復旧のために30万人の青年が平壌(ピョンヤン)から派遣されたが、水害で農業生産力が落ちた地域で食糧が絶対的に不足し、中央からの支援もない中で、青年たちは逃げ出すか、盗むしかない状況に追い込まれている。そこで国家保衛省や社会安全省は、長期化する無秩序状況を抑え込むために、殺人や略奪を働いた16人の青年を公開銃殺に処した。ところがその後、状況は沈静化するどころか、ますます悪化し、鴨緑江流域の各都市が統制不能状況に陥っているという。

4月2日(水)「李雪主の親友が中国で行方をくらます…金正恩の秘密握るか?」
金正恩夫人の李雪主(リ・ソルチュ)の親友が中国で行方不明になり、1か月近く大騒ぎとなっている。周知のとおり、李雪主は銀河水(ウナス)楽団の歌手として活動中に金正恩の目に留まり正妻にまでなった女性だが、喜び組などのように幼いころから管理されていなかったため、若い頃にはいろいろな交友関係もあったし彼氏もいた。その彼氏は人知れず連行され抹殺されてしまったが、女友達だった朴ミヒャンは、李雪主の後ろ盾で、若くして出稼ぎ女性労働者らを統括する地位にいた。その朴ミヒャンが中国に派遣されて3年で行方をくらましたのだ。行方不明になった理由は未だ不明だが、北朝鮮保衛部の要請で中国の公安が指名手配のビラを撒いて捜索中であることからして、金正恩に関する秘密を握っているなどの重大案件が背景にあるのではないか。後続情報を把握し次第、またお伝えしたい。

4月3日(木)「羅津・先峰地区、外国人観光客に開放後1週間で取りやめた原因は?」
北朝鮮がコロナ後、羅津(ラジン)先峰(ソンボン)地区を中国人をはじめとする外国人観光客に全面開放し、1週間でこれを中止した事件があったが、その背景が判明した。コロナ以前に北朝鮮に投資した中国人80人がこの地域を訪れ、北朝鮮側の事業関係者と資金回収の話し合いに臨んだところ、北朝鮮側がコロナを言い訳に資金回収に応じなかったため、両者間で多数の重軽傷者を出すほどの乱闘騒ぎが起きたのだ。国内事件と違って中国との国際関係に関わる事件なだけに、本来なら北朝鮮政府が債務関係の解決に乗り出すべきところだが、中国から投資された10億ドルに上るとも言われる資金を北朝鮮側業者が着服し、その一部を「忠誠資金」として金正恩に上納しているため、北朝鮮側は積極的に解決しようとしなかった。中国側もこれに激怒し、先日起きた大連沖での北朝鮮船への中国船衝突事件で、中国は北朝鮮に対し一切の誠意を見せなかった。このように中朝関係は悪化の一途をたどっており、ウクライナ戦争が終わればロシアからの実入りも少なくなるため、今後ますます北朝鮮は窮地に追い込まれることになるだろう。

4月4日(金)「朝鮮王朝よりドラマチックな後継者を巡る女たちの闘いに決着か?!」
最近姿を見せていなかった李雪主が、出産したようだ。北朝鮮は昔の朝鮮王朝のように、後継者となる男の子を産んだかどうかで、正妻と側室らとの力関係が変わる。金正恩の子供としては2018年以前は女の子しかおらず、2018年に李雪主が産んだ男の子は、韓国国家情報院によれば、心身の健康に問題があるとされている。玄松月(ヒョン・ソンウォル)やリョ・シムも金正恩の子と見られる男の子と産んでいるが、やはり正室が産んだ男の子には及ばない。今回、李雪主が産んだ4人目の子の性別はまだ公開されていないが、男の子であれば金正恩王朝の女性たちの権力構造は決定的になるだろう。

4月5日(土)「瀋陽で逮捕された李雪主の親友、今後の行方が注目される」
李雪主の親友である朴ミヒャンが失踪したことを3日前にお伝えしたが、彼女が中国で逮捕されていたことがわかった。ただ、北朝鮮から彼女の捜索を強力に要請したにもかかわらず、中国当局は彼女の身柄を北朝鮮に引き渡そうとしていないだけでなく、北朝鮮に逮捕を知らせてもいないようだ。過去にも、例えば黄長燁(ファン・ジャンヨプ)労働党秘書が北京で脱北の意思を示した時、北朝鮮の強い送還要請にも関わらず、中国は第三国行きを認めた。この時、金正日が黄長燁を消すために100人の特殊部隊を中国に送り込んだが、中国は黄長燁を守るために戦車を布陣させ、北朝鮮に対し強力な警告を発したのだった。朴ミヒャンの場合も、金正恩の秘密をたくさん知っていることから、中国政府が彼女を保護し利用しようとしている可能性がある。

4月6日(日)「中国による北朝鮮の金塊取引禁止で金正恩行き詰る」
世界情勢が揺れる中、金の価格が上がっている。しかし、中国政府は北朝鮮政府が中国内で金塊を現金化することを厳禁している。取引自体が不法とされ、発覚した場合はすべて没収され、中国政府の手で処分されている。これまで、北朝鮮は中国国内で不法な暴力団組織を利用して金塊を現金化する仕組みを維持してきたが、最近、これが徹底的に取り締まられており、北朝鮮は現金入手に行き詰っている。金正恩は父親の金正日が側近に贅沢品をプレゼントしてきた慣例を疎かにしていたが、最近はその意義に気づいたらしく、崔龍海(チェ・リョンヘ)や金徳訓(キム・ドックン)などの幹部にベンツS400を与えるなどプレゼント政治を復活させている。しかし中国政府の強力な取り締まりに、このプレゼント政治にも先が見えている。

「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)