10月7日(月)「金正恩のみを除去? 海外北朝鮮人から大歓迎の声」
10月1日「国軍の日」の演説の中で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「北が核を使おうとしたときは北の終末の日だ」と述べたことに金正恩が猛反発し、これに対して4日、韓国国軍参謀本部が「再度警告する。我々の戦略的、軍事的目標は北朝鮮の同胞ではなく、金正恩一人」だと表明した。この「目標は金正恩一人」という公式発表に対し、これこそが北朝鮮人民の願うところだと評価する反応が、海外在住の北朝鮮人から次々に寄せられている。現政権下では、米韓の特殊部隊が合同訓練をしている。文在寅(ムン・ジェイン)政権下では考えられないことだった。
10月8日(火)「元対南工作員のキム・ドンシク氏との対談…光州事件の疑問と問う」
北朝鮮では1980年の光州事件は、韓国に送り込まれた北朝鮮軍が介入して起こしたものと信じられている。姜代表が北にいた頃も、周りに「光州に行ってきた」と武勇談を誇る人が何人もいた。その真相について、1995年に南派されて任務遂行中に検挙され、現在は転向して韓国で定着しているキム・ドンシク氏に話を聞いた。キム氏によれば、光州事件が金日成の指導によって起こり、勝利したという話は、金日成の業績を称えるために作られた話だ。そもそも光州に行ってきたと自慢話をするような工作員はいない。光州事件のような短期間で極地的な衝突では、任務遂行に絶対必要な通信連絡のシステム構築が困難であること、清津(チョンジン)に1980年5月に死亡した約100人の烈士合葬碑があり、光州で死亡した北朝鮮人の墓ではないかと言われているが、そのような死亡事故はほかにも起こっているため、正確に調査しないと何とも言えないなど、80年代から90年代にかけて工作員であった経験からして確証を持てる根拠がない。ただ、工作員は実際に南派されているし、その扇動を受けた韓国人が暴動のきっかけを作ることはありうるし、軍隊経験のある南の人間がそれに関われば武器庫の襲撃も可能であるなど、何らかの可能性は否定できない。しかし、直接的な介入があったという確かな証拠は今のところないとしか言えない。なお、池萬元(チ・マヌォン)氏の主張には明らかに事実と異なる部分が含まれているため、真相究明の障害になりうることに注意すべきだ。
北朝鮮の対南工作についての詳細は、9月下旬に開設されたキム・ドンシク氏のYouTube「북한 S파일」を視聴されたい。
10月9日(水)「『目標は金正恩1人』で北朝鮮全地域に歓喜!暴風前夜」
尹錫悦政権が「韓国の主敵は北朝鮮人民ではなく金正恩1人だ」と述べたことに衝撃を受けた金正恩が、北朝鮮の国防科学院創設60周年記念式典の演説で「我々は韓国を攻撃する意思は全くない」「韓国が平和と安全を求めるなら、力による現状変更や核の使用に至らないよう管理することだ」と表明した。従来とは大きく方向転換したと見られるこの発言は、1つには金正恩が南に対する敵意がないことをアピールし、もう1つには北朝鮮の住民に対し、韓国が、あるいは韓米日がイスラエル方式で北朝鮮指導部を排除することはないから、反政府的な動きを企んだりするなよ、というメッセージが込められたものと見られる。中東ではイラン攻撃に続き、レバノン攻撃でヒズボラ指導部が徹底的に排除された。ヒズボラは北朝鮮の協力を得てレバノンの地下にトンネルを張り巡らせていたが、これがイスラエルの精密爆撃によって完全に破壊されたのだ。しかし、イラン、ヒズボラ、ハマスへの爆撃は民間人の居住地域の地下に軍事施設があったため、民間人に甚大な被害が出て、国際的非難に晒された。一方、北朝鮮では民間地区(木が生えていない)と軍事地区や金正恩の別荘(木が鬱蒼としている)は明確に区分されているため、指導部攻撃ははるかに容易だと思われる。つまり北朝鮮指導部の排除ははるかに容易であり、先般の韓国の軍事目標表明で金正恩は相当にビビっている。韓国が優位な立場で北に対する好機である。今後、北朝鮮が汚物風船を送ってくるようなら、自由を呼びかけるビラ風船をその百倍も千倍も送りこんで、北朝鮮内部の変化を促進することを、尹大統領に進言したい。
10月9日(水)「キム・ドンシク氏との対談<第2弾>…チェ・ジェヨンはなぜ?」
元南派工作員として韓国の従北勢力である統合進歩党の壊滅に貢献したキム・ドンシク氏に、最近、韓国大統領夫人の金建希(キム・ゴニ)女史に接近して謀略に陥れた自称牧師のチェ・ジェヨンについて聞いた。キム・ドンシク氏によれば、金正恩の「統一を放棄する」という方針が波紋を呼んでいるが、そもそも北朝鮮の言う「統一」は南北統一ではない。北朝鮮の政策・路線に従い金一族に忠誠を誓う集団を統合することが目的である。その任に当たる統一戦線部は、韓国の祖国統一汎民族連合や韓国大学総学生会連合、日本の朝鮮人総連合会、米国の在米同胞全国連合会など、韓国や海外の反米・反韓国政府団体を連合して勢力化し、反韓国政府闘争を起こさせる。特に、海外の親北・反米傾向の宗教家など社会的影響力のある人物に近づき、平壌に招待し、高官に会わせたりしながらもてなし、それぞれの活動を支援する。北朝鮮の組織に取り込むことはなく、ある場合は統一戦線部から提案し、ある場合は海外人材の方から相談を受けたりしながら、究極的には韓国国内に軋轢を起こし、社会を分裂させ、国力を弱化させることを目的とする。過去には、テコンドー創設者の崔泓熙(チェ・ホンヒ)、韓国外交部長官だった崔徳新(チェ・ドクシン)、在独音楽家の尹伊桑(ユン・イサン)、在独研究者の宋斗律(ソン・ドゥユル)などが工作の対象だった。チェ・ジェヨンも米国で牧師として活動しながら、北朝鮮に何度も出入りし、統一戦線部の孟(メン・ギョンイル)にも会う中で提案を受けたのだろう。確証はないものの、その可能性は十分にある。
国家情報院が文在寅政権下で骨抜きにされ、スパイ捜査権が警察に移管されたことで捜査の力量が減じられ、チェ・ジェヨンのような犯罪者を捕らえられないだけでなく、左派マスコミから英雄扱いされるような雰囲気があることはもどかしい限りである。
10月10日(金)「北朝鮮兵士4大隊ウクライナ派兵…仲間の戦死に残りは逃亡」
北朝鮮兵士がドネツクで6名爆死したことから、北朝鮮のウクライナ派兵は本当だったことが分かった。前線兵士ではないが後方の工兵部隊として、既に師団レベルでの派兵が行われたと見るべきだ。ハマスやヒズボラでは北朝鮮の兵士が地下要塞化に協力したが、露ウ戦争ではロシア軍の砲兵部隊として、またウクライナ軍の後方を攪乱するためのトンネル掘削部隊として活動しているのではないか。ロシアもウクライナも兵士の枯渇に悩まされているが、ロシアが北朝鮮からの派兵を受けた以上、西側もウクライナに派兵する名分ができたのではないか。その意味で、北朝鮮のウクライナ派兵は露ウ戦において重要なターニングポイントとなりうる。
10月11日(木)「韓国の『目標は金正恩』表明と同時に金ハンソル登場」
最近、米国CIAが対北朝鮮情報員を大量に募集しているとの報道があった。このような情報を公開すること自体、米国が既にしかるべき作業に取り掛かっていることを物語っている。ただ、韓国が尹政権下のような正常な状況にある間は米韓が協力するだろうが、民主党のような異常な集団に政権が代わるようなことがあれば米国が単独で、或いは日米が共同で行動に出るかもしれない。イスラエルにはモサドという強力な諜報組織があるが、北朝鮮の中東への核拡散を恐れるイスラエルの協力を、米国が得る可能性もある。父親を公衆の面前で殺され、母国の民主化のため戦う意思を表明している金正恩の甥・金ハンソルを米国が保護している。米国は、金一族の独裁に70年間も洗脳されてきた北朝鮮住民を、時間をかけて正常化していくのに、金ハンソルが重要な役割を果たしうると判断しているに違いない。
10月12日(土)「北朝鮮漁船また脱北…残された唯一のルートは海」
北朝鮮政府が休戦ラインを完全封鎖し要塞化すると息巻くなか、またも1人の青年が漁船での脱北に成功した。昨年、黄海道に暮らしていた家族親戚9人が漁船での脱北に成功し、韓国に暖かく受け入れられて定着している。一部はYouTubeなど様々な場で北の内情を告発するなど、活発な活動を行っているが、そのことが北の住民の間に既に伝わっている。黄海道は穀倉地帯であるうえ海に面していて、もともと農水産物が豊かな地方だが、農民は最下層民として蔑まれ、農作物はことごとく国に納めさせられていた。最近は漁に出ようにも脱北を警戒する当局に出漁を禁じられ、生活が成り立たないという。去年脱北した青年が黄海道で撮影した動画を見ると、悪名高いヨドク収容所で姜代表が経験したより悲惨な状況である。一方で、黄海道は休戦ラインが近いことから、韓国に家族親戚がいる人が多く、海上脱北の条件にも恵まれている。尹大統領の「脱北者を統一の主体」とする統一方針もビラや拡声器を通じて伝わっており、黄海道民が保衛部や警備隊に賄賂を使うなどあらゆる手段を使って脱北しようと試み始めている。
10月13日(日)「金正恩、記念式演説後、不満抱く兵士に詰め寄られ…」
金正恩国防綜合大学創立60周年記念日に出席した金正恩は、記念演説の中で「韓国を攻撃する意思はない」と述べた。これまで民族自主平和統一を目指していたかと思えば、「韓国を核で殲滅する」と言ったり、「2国家論」を主張したりしている。これを聞いて、北朝鮮ではエリートの国防綜合大学の学生はどんな考えを抱いただろうか。演説後、いつものように金正恩が兵士たちに囲まれるシーンが演出されたが、その際、1人の兵士が金正恩に詰め寄るようなしぐさをし、警護部隊員がそれを阻止し、もう1人の兵士が金正恩の腕を掴んでいる写真が見つかった。金正恩はあざ笑うような表情で兵士を睨んでいる。この後何が起こったのか、事件の経緯はどうだったのか、今後も注視していきたい。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)