11月4日(月)「金兄妹がテレビで韓国を正式名称で尊重しながら猛非難?」
北朝鮮でこれまで「傀儡軍」「人民」と呼んできた対象を、金与正が公式声明の中で「大韓民国国軍」「大韓民国国民」と呼んだ。声明の中で韓国を猛烈に非難しながら韓国を尊重して正式名称で呼んだことに、金兄妹の追い詰められた状況、不安な心情が表われていると言える。北朝鮮はロシアへの兵器供与と派兵によって自国内に軍事的な空白が生じつつある。さらに、韓国政府の「主敵は金正恩1人だ」との声明が北朝鮮国内にも拡散していることから、「韓国を壊滅させる」だとか「大惨事に見舞われる」だとかの極端な表現を使って、兵士らにハッパをかけ、同時に韓国を脅すことで、不安をかき消しているのだろう。
11月5日(火)「派兵部隊生き残り兵士の動画に北朝鮮住民の怒り爆発」
ウクライナとの戦闘でほぼ全滅し1人だけ生き残ったという兵士を撮影した動画が、北朝鮮内にも拡散している。ウクライナ政府の公式発表では北朝鮮兵はまだ参戦していないとされるが、実際には既に少なくとも2度の戦闘に参戦したと見られ、負傷兵の動画を見た脱北者らは、話し方や使用語彙からして「これは北朝鮮兵士に間違いない」と言っている。戦場では、装甲車で移動するロシア兵に対し、最低限の武器だけを渡され平原に放り出される北朝鮮兵らは、いくら暴風軍団といっても身を守るすべがない。息子を軍隊に行かせている親は、自分の子が派兵されたのかどうか、無事なのかどうかを確かめようと、藁にも縋る思いであらゆる情報を得ようとしており、中朝国境付近からロシアへの電話の需要が殺到している。
11月6日(水)「北朝鮮暴風軍団100人死亡…北朝鮮大使館は大わらわ」
ウクライナ戦で死亡した北朝鮮兵士が100人を超えることが分かった。戦死した北朝鮮兵士の数を把握しているのは駐ロシア北朝鮮大使館である。現在、同大使館は死亡者の処理対応に追われている。亡骸をそのまま本国に送るのか、火葬にするのか、また、本国の家族にどう伝えるのか、補償金をどうするのかなど、本国と送受信する中で漏れた情報がキャッチされた。派兵後、短期間で多くの死傷者を出しているのは、山岳地帯で訓練を受け、ゲリラ戦に特化された兵士が、いくら鍛え上げられた肉体と高度な技術をもってしても、広大な荒野で短・中・長それぞれの距離に合わせて速射砲、迫撃砲、ミサイルと使い分ける平地戦であるのに加え、ドローン戦に長けたウクライナの高度な戦術には手も足も出ないこと、ロシアが危険な前線に自国兵士の代わりに北朝鮮兵士を弾除けとして送り込んでいることが原因である。
11月7日(木)「北朝鮮軍死亡者の名前が明らかに…家族らの不安と怒り」
頭と顔に包帯を巻きベッドに横たわった兵士が動画の中で語った内容に2人の友人の名前が含まれていたが、ウクライナ軍は自国領で確保された死傷者の個人情報を収集している。そのうち北朝鮮兵士の情報は韓国大使館に伝えられており、韓国軍は戦死した北朝鮮兵士の名前を対北拡声器で北側の兵士・住民に知らせている。北朝鮮政府は未だに北朝鮮軍のウクライナ戦派兵を住民に知らせていないが、それは、名分なき派兵であるうえ、戦闘による死傷者に対する補償を約束していないため、住民が知って怒りが爆発させるのが怖いからに違いない。しかし派兵の事実も死傷者の名前も既に北朝鮮内に伝わり始めている。しかも派兵された兵士の代価で、金正恩はミサイルを打ち上げ続けている。また、ロシア兵が「犬の肉」と朝鮮語で書かれた缶詰を見せる動画をアップしているが、北朝鮮兵士を馬鹿にするものであり、戦場での北朝鮮兵士の待遇の劣悪さを思わせるものである。
11月8日(金)「ロシア派兵を前に戦々恐々の暴風軍団、夜逃げ続出」
ロシアのハバロフスクの軍需地域に、何百人、何千人単位で北朝鮮兵士が続々と結集していることが衛星写真で確認された。ここで1か月ほどの基礎的な訓練を受けると戦地に送り込まれる。派兵前の暴風軍団から幹部の子弟は早々に抜け出し、賄賂を使える家ではあらゆる手段を講じて子弟を抜け出させている。暴風軍団は精鋭5万人と、各軍団下に軽歩兵旅団5万人の計10万人と推定されるが、このうち脱北者を取り締まるために国境地帯に配備された兵士は国境地帯の地理に詳しい。決心さえすれば武器を手に国境を超えることは困難ではない。軍団に残された兵士らは権力もお金もない家の出身者ばかりで、ウクライナ戦に送られて死ぬぐらいなら、脱出途中で殺されるとしても、ここで逃げた方がましだと考えるのは自然なことだ。今では1人2人ではなく集団で夜中に逃出す事例が増えているという。
11月9日(土)「金正恩が最悪の指示!…北朝鮮捕虜をロシアに送還するな!」
金正恩がロシアに派遣された金ヨンボク中将に「我々に捕虜は必要ない。我々に必要なのは栄えある死のみだ」との指示を下した。北朝鮮では捕虜になった者は変節者だと考えられている。朝鮮戦争の際に捕虜となり、休戦後帰還した者たちは家族までが生涯、韓国軍の捕虜より劣る逆賊だとされた。民主主義国家では考えられないことだが、北朝鮮ではそれが常識だった。しかし、現代の兵士は以前の北朝鮮人とは異なり、死ねと言われて死ぬようなことはない。ウクライナ軍に確保された北朝鮮人捕虜をロシアに送還すれば殺されることは明白であるからには、北朝鮮人捕虜は他国の捕虜と区別して、送還しないよう国際的に協力すべきである。また、北朝鮮兵士がこの動画を見たなら、絶対に命を無駄にせず、何としても生き残り、自由主義陣営に逃げてきてほしい。
11月10日(日)「スマホを配布された北朝鮮兵士、韓国YouTubeに没頭」
ウクライナ戦の戦場に派遣された北朝鮮の兵士たち一人一人に、ロシア軍からスマートフォンが配布され、北朝鮮兵士たちがYouTubeに夢中になっている。北朝鮮では携帯電話を自由に使わせず、もし韓国コンテンツを見た場合は重罪に処せられることになっているが、ロシアではそのような制限がなく、戦場での連絡に必要なため携帯電話を配ったのだ。スマートフォンを手にした北の兵士たちは、北で禁止されているポルノ動画をいの一番に見る。これは脱北した男性なら必ず通る道だ。その次に見たくなるのが金正恩に関する動画だ。世界からの評価、北で知られていない金一族の真の姿、「金正恩」と検索すれば金一族パロディなどが怒涛のように表示される。さらに各種の情報、旅行動画などを見だすと、思ってもみなかった世界が広がり、考えが180度変わり、北朝鮮にとって最も危険な集団と化すのだ。もはや韓国軍による心理戦は必要ない。既に自ら価値観を変化させた北朝鮮兵士を、いち早く戦場から離脱させるよう導くのみだ。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)