2025/8/4(月)「金正恩政権の後継者は中国の保護の下、マカオにいる金正男の長男か?」
中国政府が北朝鮮の政権交代のためのカードを準備している。これまでマレーシアで殺害された金正男(キム・ジョンナム)の息子のうち、金漢率(キム・ハンソル)のみが知られてきたが、彼は金正男の2番目の妻である李恵慶(リ・ヘギョン)の子であり、妹の金率熙(キム・ソルヒ)と共にヨーロッパに留学していた。父が暗殺された後、米国で自由朝鮮(チャユチョソン)というグループと共にインタビュー動画を制作・公開したため注目を集めた。しかし、金正男の本妻であるシン・ジョンヒの子・金クムソルが、むしろ有力な後継者となりうる人物であり、彼は現在中国政府の保護下にいる。シン・ジョンヒは対外連絡部の工作員だった女性で、金正男の一番のお気に入りの妻だった。漢率が世界的に有名になったため、クムソルの存在感があまりないが、彼も漢率に劣らず聡明な青年だ。父亡き後、クムソルも母と共に渡米しようとしたようだが、北朝鮮が本国に連れ戻そうとするのを中国が阻止し、中国政府が身辺の安全を保障するという条件で母子は中国のマカオに留まっている。遠からず北朝鮮が政権交代局面に入ると見られ、かつ金正恩の息子の中に適当な後継者がいないと見られる中、中国は金正男の嫡子である金クムソルをカードと考えているのだ。今後の展開に注目したい。
2025/8/5(火)「人民軍の最高権力・保衛局長が粛清される!」
北朝鮮人民軍の4大権力は、金正恩を護衛する護衛局、人民軍全体を監視する保衛局、人民軍の労働党組織である総政治局、戦闘を統括する総参謀部である。政権初期に総参謀部の李英浩(リ・ヨンホ)が銃殺されて以来、総参謀部はトップが何度も入れ替わったし、総政治局は黄炳瑞(ファン・ビョンソ)局長らの粛清があった。また、護衛司令官の尹正麟(ユン・ジョンリン)と労働党政治局委員の金ソンドクが銃殺されたことで護衛司令部の実態が明らかになったりもした。今回の注目点は、北朝鮮史上初めて人民軍保衛局長の趙慶喆(チョ・ギョンチョル)が粛清されたことだ。金正恩と接見する際、唯一銃を携帯できるのが人民軍保衛局の974部隊である。それほど金正恩が最も信頼する部局であり、他の部局には何かしら不祥事があっても、保衛局だけはそういうことがなかった。そのため今回、ロシアの戦争に関わる中で、軍需工場拡張の必要に迫られた際、金正恩の信頼の最も厚い保衛部に1億ドルもの資金を預け、必要な軍需資材を中国から導入する計画を立てたのだった。ところが、以前お伝えしたように朴ウォンニル所長の3千万ドル持ち逃げ事件が起こり大騒ぎとなった。この事件は、金正恩直属の巨額な資金の持ち逃げに加え、賄賂なども絡み、結局、これまで最後の砦だった保衛局の趙慶喆局長らが粛清されるという事態に至ったのだ。これで北朝鮮人民軍も最期を迎えるのかもしれない。
2025/8/6(水)「北朝鮮に生還した暴風軍団がドローン攻撃の恐怖を伝える」
ロシア-ウクライナ戦争に派兵されていた北朝鮮兵士の一部が交代勤務で帰国してきている。派兵の目的はロシア軍支援でもあったが、特殊部隊に現代戦を経験させることも重要な目的だった。帰還した兵士は公式的には現代戦の経験を伝える任務に当たっているが、水面下では現代戦の恐怖が兵士の間に広がっているという。北朝鮮の特殊部隊は、よく知られるように強靭な肉体で勇猛に戦うことを売りにしているが、実際の戦場で肉体の強靭さは何の役にも立たず、ドローン攻撃にあえなく倒されてしまう。そのうえ最新兵器を備え世界最強だと信じていたロシア軍が、ウクライナのような小国に、意外にも手を焼いているではないか。兵士にしてもロシア、北朝鮮のような独裁国の兵士の方が勇猛果敢に戦うかと思いきや、ウクライナや西側の自由主義国の兵士のほうが勇敢に効果的に戦っている。また、ロシアの兵器が西側のストームシェイドやハイマース、ドローンなどの最新兵器、現代戦に太刀打ちできないという現実を目の当たりにしたのだ。ウクライナ軍と韓国軍を比較すれば、明らかに韓国軍の方が力量が優れているうえ、韓国軍には米軍がついている。つまり対韓国戦で勝ち目はないのではないか、という話が兵士たちの間で囁かれつつあるのだ。
2025/8/7(木)「ロシア人記者が北朝鮮の真の姿を暴き金正恩が激怒!朝ロ関係破綻か?!」
元山カルマ・リゾート地区への外国人の入場が全面禁止になった原因は、ロシア外相の訪朝に同行した、「コメルサント」という日刊紙の記者の書いた記事が原因だったことが分かった。外相と共に招待し、リゾート地区の素晴らしさを宣伝する記事を書いてくれることを期待したのに、否定的な記事を書かれて金正恩が大激怒したのだ。記事にはこうあった。金正恩が来訪する前日は人っ子一人見られなかったリゾート地区に、金正恩の来訪以降、突然、現地の観光客が現れたが、それぞれの行動が演出された不自然なものだった。あるカップルは朝から晩までビリヤードばかりしていたし、海で遊ぶ人々も炎天下でずっと同じ場所で遊んでいて、リゾートに遊びにきたのではなく、監視員に24時間監視され、不自然な行動を強要された人々だったのだ。さらに、金正恩バッチをつけ、完璧なロシア語を話す案内人は記者を監視するために随行していたことが明らかだった。同じ社会主義を経験したロシア人の目にも欺瞞的で異様な実態だったことをありのままに書いために、金正恩の怒りを買ったのだった。過去にもロシアのヴィタリー・マンスキーという映画監督が、朝ロ合作で北朝鮮を称賛する記録映画を制作するために平壌を訪問し、そこで北朝鮮の良い面ばかりを映像に込めようとしたが、現地を体験する中であまりに異常で理不尽な実態に疑問を抱き、北朝鮮の意向に背いて、内緒で監視社会の異常さを描く映像を撮り、それを映画化して世界に暴露したことがあった。今回も同盟国ロシアの記者の鋭い目が北朝鮮の真の姿を暴き出した格好だ。(2025/8/2付動画の再放送)
2025/8/8(金)「平壌の新築高層ビルは張り子の虎、無法者ギャングと化した人民軍突撃隊」
金正恩が2021年から毎年1万世帯分の住宅を建設すると宣言し、このたび平壌の和盛(ファソン)地区の第2期工事竣工式に金ジュエと共に立ち会った。しかし、表向きの華やかさとは裏腹に、北朝鮮の住宅建設現場には、動員された人民軍突撃隊による凄まじい犯罪的行為が横行している。90年代初頭でも建設現場には突撃隊の若者が動員されていたが、まだ生活に余裕のあった当時も、彼らは傍若無人に振舞っていた。それが、現在では食糧配給もなく、ただきつい労働を強要されるだけで、報酬もない、将来の希望も何もない若者たちは、ルール無視、弱肉強食の中で生き残るしかない。賄賂で私腹を肥やす幹部たちを横目に、現場の若者たちはセメントや鉄筋、内装用品などの資材を横流しして小金を得るのだ。その中で、盗み、強盗、傷害、殺人、強姦などありとあらゆる犯罪行為が行われる。さらに悲惨なのは、今年の異常な暑さの中で、エアコンがないのはもちろん、建設現場では暑さに配慮して労働者を休ませたりしないため、熱中症の被害が続出しているのだ。ただでさえ電力不足のため、高層住宅でもエレベーターは動かず、上下水道も機能していないため、何万戸の住宅を建設しても意味がないのに、完成した高層住宅は、すべて張り子の虎のような、中が空洞の危険な建築物になってしまっているのだ。(2025/8/3付動画の再放送)
2025/8/9(土)「対南戦略部局の幹部2人が金正恩の方針に反する発言で処刑の危機に?!」
北朝鮮の対南戦略を統括する労働党10局(以前の統一戦線部)の李善権(リ・ソングォン)局長と李炳鐵(リ・ビョンチョル)顧問が、来朝した在日の朝鮮総連や在米僑胞、在カナダ僑砲など海外在住の同胞らが集まる中、「統一するなとはどういうことか説明してくれ」という事実上抗議の声に対し、「我々はあくまでも統一を志向する」と答えてしまった。しかし、これは金正恩の指示や許可を受けずに言ってしまったとした考えられない。2人が勝手に判断したとすれば、姜健(カンゴン)軍官学校に連れていかれる運命にあるのではないか。
2025/8/10(日)「朝鮮総連が金正恩の統一放棄に怒り心頭…反金正恩の機運広がる」
北朝鮮最大の在外組織である在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が、ついに金正恩と全面対決の姿勢を示している。最近、平壌を訪問した朝線総連の団体が、金正恩政権の統一放棄政策に対し、在日朝鮮人社会が深刻な憂慮を抱いており、このままでは朝鮮総連を運営すべき名分も理由もないとして強力に抗議したという。特に重要なのは、朝鮮総連の基盤となる民族教育機関の朝鮮学校である。金日成元帥様が建ててくださった学校、実際には在日朝鮮人たちの寄付で建てられた学校だが、曲がりなりにも朝鮮の学校だからこそ、「民族」「統一」という言葉がキーワードだった。いつの頃からか金一族への個人崇拝が重要な位置を占めるようになったとは言え、金日成・金正日も「祖国統一三大憲章」を掲げ、「統一は民族の稼業であり、我々の使命だ」と主張してきた。朝鮮総連の構成員は大部分が朝鮮半島南部の出身者だが、政治的に北を支持していても、南北が統一されることで故郷を取り戻すことができるのだ。統一を放棄するということは、永遠に自分たちの故郷に背を向けることになり、朝鮮総連に身を置く意味がなくなってしまう。2000年代、金正日が日本人拉致を認めたダメージにより規模が縮小し、朝鮮総連の存在自体がほとんど有名無実化しているとはいうものの、東京をはじめ全国に数十の拠点が残っている。しかし「統一放棄」によって彼らはメンタル崩壊状態だ。朝鮮学校では教科書から「統一」を消さねばならず、学校運営の柱を失ってしまった。分断された祖国を統一して「民族」を取り戻すのが教育の中心理念だったのに、これを失うならもはや北朝鮮に追従する教育は続けられないと、第一線の教師たちは怒っている。これまでの民族教育への献身が恥ずかしく、惨憺たる思いなのではないか。また経済支援を続けてきた商工人たちも、呆れと諦めの境地にある。金正恩の掲げた「統一放棄」政策は、これまで北朝鮮の国外組織として本国を支えてきた朝鮮総連に対する裏切りだと言えるし、朝鮮総連が瓦解することになれば、本国も終末を迎えることになるのではないだろうか。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)