3月24日(月)「中朝国境付近の携帯電話通信が完全に遮断された!」
この1週間ほど、北朝鮮と中国、韓国を繋ぐ携帯電話が全面的に遮断されている。中朝国境付近では、金正恩政権に入ってからずっと、携帯電話との戦争を繰り広げてきたが、いくら取り締まっても根絶やし難いのが携帯電話だ。近年では、国内で物が不足して密売の量が減り、国外とのやり取りも途絶して賄賂を取れる機会が減って経済的に窮している国家保衛省の要員が、携帯電話を使って脱北者から北朝鮮にいる家族への送金の仲立ちするブローカーから賄賂を受け取ることで収入を得ている。このように送金すると、40%を超える手数料を取られるが、確実に北の家族にお金が届く。韓国にいる脱北者が3万4千人、中国国内にも5万~10万人の脱北者がいるため、海外からの送金はバカにならない。金正恩政権はこれを取締まるために、労働党組織指導部と労働党傘下の監察機関から保衛省特別監視チームを送り込んだ。しかし、そのような情報を事前にキャッチした保衛省要員らが、携帯電話を一斉に土の下に埋めてしまったために携帯電話による通信が途絶えてしまったのだ。

3月25日(火)「北朝鮮の仕業を疑わざるを得ない同時多発的山火事発生」
2日前から全国10カ所以上で山火事が発生していた。犯人が分かった件もあるが、60%は原因不明だという。なぜよりによってこの時期に山火事が同時多発的に起きるのか。24日には弾劾訴追された国務総理で大統領代行だった韓悳洙(ハン・ドクス)氏の弾劾審判結果が宣告され、26日には李在明(イ・ジェミョン)民主党代表の選挙法違反の控訴審判決が下り、そしてその後に尹錫悦大統領の弾劾審判の宣告を控えている時期である。これまでにも2023年2月28日に全国9カ所で、2022年3月5日には10カ所以上で、2009年4月6日には14カ所以上で山火事が起こっており、韓国で政治的な大事がある時期に同時多発的に山火事が起こるのは偶然とは思えない。2014年に違憲政党として解散させられた統合進歩党を率いていた李石基(イ・ソッキ)らは、大韓民国を混乱に陥れる様々な方法の一つとして山火事を起こすことを挙げていた。空気が乾燥して火が回りやすい季節に山に火をつければ簡単に社会が混乱に陥るので、北朝鮮でもこれを戦略として捉えている。北朝鮮で山火事を出した者は厳罰に処せられるが、韓国では処罰が緩い。捜査当局は徹底的に捜査して原因を特定し、厳重に対処してほしい。

3月26日(水)「金正恩が陸軍より海軍を優先する作戦?陸軍のプライド傷つける」
金正恩は人民軍の80%を占める陸軍を見下すように、「海陸空軍」という表現を使った。今回のロシア派兵では人民軍偵察総局の爆風軍団を派遣したものの、人海作戦に投入されて次々と殺されていった。これを見た金正恩が、陸軍より海軍の方が役に立つと考えたのだろう。しかし北朝鮮には軍艦らしい軍艦はない。そこでロシアのショイグ書記が北朝鮮を訪韓した折、海軍戦力に関する議論をしたという。ロシアにとっても、特攻隊として自爆テロを敢行しうる北朝鮮兵士は使えると考えたのだろう。2010年に白翎島(ペンニョンド)沖で哨戒艦天安(チョナン)号を攻撃して爆沈した船は、小さな古い潜水艦だった。その北朝鮮海軍を再建するためにロシア軍と共同し、魚雷を搭載した半潜水艦を改良した自爆部隊を編成すれば、米国の巨大な航空母艦、巡航艦、駆逐艦などの威力を無力化できるという目算のようだ。

3月27日(木)「北朝鮮全域で金正恩を批判する落書き・ビラ拡散」
北朝鮮の青年層の政府に対する不平不満が高まっている。今、平壌ではすべての大学生と高校生を最前線に入隊させるというパフォーマンスを行っている。ロシアに派兵されて亡くなった兵士は1万人を超え、負傷者は数知れないが、平壌で治療を受けている兵士は1人もいない。その一方で、平壌の病院ではロシア人の負傷兵が治療を受けていることが伝わり、これらに対する批判の落書きやビラが、平壌だけでなく各地に広がっている。派兵された兵士は行き先も知らされずウクライナ戦線に送られ、ロシア兵の弾除けとして戦場に投げ出され、逃げようとすればロシア兵に後ろから銃で撃たれ、何人亡くなったか公式発表もされていない。我々の調査によれば死者は1万人を超え、負傷者も1万人を超えている。しかも、彼らとその家族は一切の補償金を受け取っていない。負傷者は除隊兵とされ、ろくな医療施設もない地方の病院でまともな治療も受けられずに放置されている。このような実態を目撃した若者たちの怒りを打ち消すために最前線入隊というパフォーマンスを行っているものと見られる。

3月28日(金)「4月1日から中国人は北朝鮮への入国禁止…習近平が最後通告」
金正恩が4月1日付で、企業家を含むあらゆる中国人の入国許可を出さないと発表した。金正恩政権は、中国から平壌に来る外国人はみなスパイと見なしているという。中国とは朝鮮戦争を共に闘った血盟関係であったが、ここへきて中国を、敵国と規定した韓国並みに格下げして取り扱うことにしたのだ。その背景には、習近平が金正恩に対して、「これ以上、中国を侮辱することを許さない、中国が多少好意的に対応したからといって曲解するな」と警告したことがあろう。さらに、中国は北朝鮮に対して、改革開放に転換して最低限の人民生活を保障するよう求めているが、北朝鮮はこれを内政干渉と見なし、今後中国とは縁を切るという態度に出ているのだ。これまで数十年間、中国は、北朝鮮崩壊を防ぐために脱北者を対逮捕しては強制送還していたが、そうして送還された脱北者は収容所送りになったり保衛部に拷問されて死亡したりしている。このように中国がいくら北朝鮮に協力しても、北朝鮮は中国を冒涜する言動をやめなかったため、中国が再三警告を発していたが、ついに北朝鮮の方から中国との友好的な関係を放棄したのだ。

3月29日(土)「脱北漁民2人の身柄確保したが、民主党勢力が強制送還を主張?!」
今月7日、北朝鮮の漁船が1隻、中国の船団に紛れて漂流し、乗っていた2人の北朝鮮住民が韓国海軍に捕えられた。尹錫悦大統領は脱北者はすべて受け入れると宣言したが、現在、大統領が弾劾されるかどうかという微妙な時期であるためか、彼らを北に送り返そうとしているというおかしな情報が伝えられている。2人は韓国に亡命したいのか、それとも北に戻りたいのかの意思表示をはっきりしていないようだ。北朝鮮では尹政権はもうおしまいであり、既に「共に民主党」が実権を握っていると宣伝しているため、亡命したい気持ちがあっても取締り当局者の前で意思を表明できないのではないか。脱北者を取り調べる際は、当局だけでなく、我々のように彼らの心情を理解する脱北民を立ち会わせて亡命の意思を尋ねるような措置をとり、また拙速に結論を出すのではなく、例えば3か月程度考えた末に結論を出させるようにするなどの対応を考えうべきなのではないだろうか。

3月30日(日)「韓国の山火事の原因は北朝鮮に違いない…元高官の脱北者が断言」
韓国で山火事が相次いでいるが、これが北朝鮮の仕業であることは間違いないという主張がある。脱北者で北朝鮮政府高官だった李ジョンホ氏は、混乱時に山火事で韓国社会を攪乱させるのは北朝鮮では常識だという。特に空気が乾燥し、強風の吹く春は狙われやすい。過去に山火事が10カ所以上で同時に起きた例があり、今回は数十カ所で同時に山火事が発生したが、このようなことが偶然起こることは考えにくく、意図的だと考えざるを得ない。現在の韓国の政治状況は危機的だと言えるが、今回の山火事についてマスコミが北朝鮮を疑う報道を一切しないことにも違和感を感じる。何か事件、事故が起きた時に、表面的には対処するが、その根本的な背景を追求しようとしない。韓国の哨戒艦が地雷攻撃を受けて沈没し多数の犠牲者が出た事件があるが、北朝鮮の魚雷だった証拠があるにもかかわらず、いまだに北朝鮮の仕業ではないと主張している。今回の山火事では多くの死傷者、財産被害が出ており、必ずやその背景を追求しなければならない。さらに犯人は必ずや厳罰に処するべきであるし、国民自身があらゆる危機に対し警戒心を高めるべきだ。

「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)