2025/8/18(月)「平壌の上層に通じる消息通が後継者予想に変化ありと伝える」
金ジュエが金日成(キム・イルソン)大学の物理学専攻の特設クラスに入学したという。金正日(キム・ジョンイル)が子供の頃は、南山(ナムサン)中学校という特別学校で、幹部クラスの子供たちと机を並べて、金氏一族の子供たちが一緒に学んだが、金正恩の子供たちは北朝鮮で他の子供たちと一緒に学校に通ったことがない。金正恩、金与正(キム・ヨジョン)、金正哲(キム・ジョンチョル)らはスイスに留学し、その後、金正恩は金日成大学に進学したというが、まともに学修したかどうかは不明だ。金ジュエは2013年2月19日生まれとされているので、現在、満12歳である。その子が大学に入学したということは、天才的な非凡な能力を持っているということを強調したいようだ。重要なのは、これにより金正恩の子供たちの中で最初に大学に入学したのは金ジュエだということだ。これまで本放送でも、平壌の上層部でも、後継者はあくまでも男子であり、金ジュエは、現在の金与正のように、後継者となる兄弟をサポートする役となるだろうと予想していたのだが、最近は金ジュエこそが後継者なのではないかという主張が出始めている。ここ最近、北朝鮮の重要な行事に出かける金正恩のそばには、妻の李雪主よりも目立つ位置に、常に金ジュエが同行していることも、この主張を裏付けるものだ。
2025/8/19(火)「北朝鮮の外交官とその関係者6人が米国に亡命…外務省もなすすべなし?」
現在、国外に駐在する外交官が脱北(本国離脱)した場合、その公館を担当する安全代表(保衛部員)には処刑レベルの処罰を課すと脅しをかけている。にも関わらず、最近、外交官を含む6人が脱北し米国に亡命していた。韓国が尹錫悦政権から李在明政権に変わり、北朝鮮当局はむしろほっと一息ついていた。韓国の政権交代に、北朝鮮のエリート階級も韓国への亡命を躊躇するしかなくなった。李在明政権は北朝鮮との対話を望み、脱北者を北に送り返した文在寅政権と同様、この政権も脱北者に厳しいだろうと考えている。そのため最近は離脱後、米国やヨーロッパに亡命する場合が多い。上述の6人は、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中国で離脱した外交官およびその家族だと推測されるが、現在、彼らは米国に亡命申請中である。米国が最もパワーのある国であり、最も安全であり、米国に身を寄せれば将来の統一の暁には何かしら役割を果たせるのではないかと考えるためでもあろう。また、米国には李ジョンホ元39号室局長、張スンギル元エジプト大使をはじめ、既に多くのエリート脱北者が定着している。金正日の息子の金漢率(キム・ハンソル)、金正恩の伯母の高容淑(コ・ヨンスク)など、金ファミリーも何人か米国に亡命し滞在している。そのため韓国が不安定化した今は、北朝鮮を離脱しようとするエリートたちが行く先は米国なのだ。以前、海外駐在の外交官が次々に離脱して大騒ぎになったことがあるが、それ以降、金政権は懸命に検閲し弾圧し封鎖している。それにも関わらず、外交官を含む6人が一度に離脱したことは深刻な事態であり、北朝鮮の外交ライン崩壊の兆候なのではないか。
2025/8/20(水)「猛暑の建設現場で女性兵士がばたばたと倒れる!」
平壌市内のマンション建設現場に投入された女性兵士たちが、昨今の猛暑のため熱中症で倒れてなくなるケースが相次いでいる。肉体的に限界のある女性兵士を男性兵士と同等に、猛暑の中で現場労働をさせるためで、作業中に突然倒れてそのままなくなるケースもあるという。男女ともに長袖の軍服を身に着け、十分な栄養と水分の補給もなく、エアコンはもちろん体を冷やす装置や休息もない中で長時間労働を強いられれば、ダメージを受けるのは当然だ。倒れたからと医療施設に運び込んでも、熱気のこもったテントのような場所で、熱中症は改善するどころかますます悪くなるだけだ。韓国であれば建設現場で労働者が1人でも亡くなれば大ごとだが、北朝鮮には安全意識というものが欠けているため、何百人、何千人が倒れても問題を感じないし、当然、責任も取らないのだ。
2025/8/21(木)「北朝鮮の対話要請に中国が拒否の返答…時すでに遅し」
最近マスコミが盛んに「朝中関係が改善している、交易量が増えている」と言っているが、現実には何も改善していない。むしろ中国の対北朝鮮圧迫は最終段階に入ったと言える。7月29日・30日の両日、スイスのジュネーブで世界国会議長会議が開かれた。自由主義国なら国会議長がいるが、北朝鮮のような独裁国家には最高人民会議議長に権威も権限もない。しかし民主主義国も独裁国も一堂に集まって会議を行うという。このような機会には、会議の合間に他国の代表と二者会談や多者会談を行うものだ。北朝鮮の最高人民会議議長の朴インチョルは、ロシア上院連邦評議会議長、ベトナムの人民会議議長、ラオスの国民議会副議長との会談は行ったが、中国とは会談を行わなかった。中国政府が北朝鮮との会談を固辞したのだという。中国の新華社通信によれば、中国全国人民代表会議常任委員長はブラジル、パキスタン、ロシア、カザフスタン、スーダンなどとの会議を行ったが、北朝鮮は除外されたのだ。これだけ見ても、中国が北朝鮮にいかに憤っているかが分かる。また、以前にもお伝えしたが、今年7月27日の「戦勝節(チョンスンジョル)」に中国人民解放軍18万人の犠牲者を慰霊する「友誼塔(ウイタプ)」への訪問に、中国の代表が赴かなかった。毎年、金正恩の訪問に中国代表が同行するのが慣例だったにも関わらず、である。中国は、北朝鮮と決別しようとしている段階を過ぎ、既に決別したと考えるべきだろう。今後、関係が改善することはなく、中国はもはや、いつ金正恩政権を排除し、新しい親中政権を立てるか、そのタイミングを計っている段階なのではないだろうか。
2025/8/22(金)「国境部隊を睡眠薬で眠らせて脱北に成功した家族に逮捕の1号指示」
最近、朝中国境で家族脱北が発生し、彼らを必ず捕らえろという1号指示(金正恩の指示)が下された。労働党書記だった黄長燁(ファン・ジャンヨプ)や英国大使館公使だった太永浩(テ・ヨンホ)、キューバ大使館参事だった李一奎(リ・イルギュ)など、海外で発生した大物の脱北に対しては1号指示が出されたが、国内からの脱北に1号指示が出されるのは珍しいことだ。今回1号指示が出されたのは特殊な事情があるということで、今回その事情を取材した。朝中国境には人民軍が網の目のように配置され、鉄条網を二重に貼りめぐらし、電気を通し、落とし穴を掘ってある。従って、ここを突破するには人民軍を買収しなければならないが、最近の賄賂の相場は脱北者1人当たり10万ドルにまで跳ね上がっている。しかも賄賂を受け取っておいて通報する裏切り者もいるため、もはや脱北は不可能だと言われる。ところが今回脱北した家族は、人民軍のいくつかの部隊に接近して、睡眠薬を仕込んだ食事を提供し、兵士たちが眠りこけている数時間の間に脱出に成功したのだった。この事件が重視され、金正恩にまで報告が上がったのには、いくつか理由がある。まず、国境警備兵が今も密輸業者から賄賂を受け取っているということが明らかになった、人民軍に民間人が危害を加え――今回の場合は薬を飲ませ、部隊全体が麻痺してしまう事態になった、事件の噂が国境地帯はもちろん内陸部でも持ちきりとなり、住民が浮足立って収集がつかない、といったことのためである。脱北した家族は既に中国入りしており、中国国内にも北朝鮮保衛部員がいるものの、中国の公安が協力してくれない可能性があるため、果たして捕まるかどうか分からない。過去には、脱北防止のため国境から1km以内にある家がすべて移転させられたが、その移転した家から鴨緑江岸まで1km以上の地下にトンネルを掘り、そこを通って密かに何人もが脱北していったという例があり、その件も1号指示となったことがある。
2025/8/23(土)「女性・殺人・酒タバコがやめられない金正恩…完全に人間崩壊か?!」
最近、平壌から聞こえてくる噂では、金正恩が完全におかしくなっているという。その1つは好色だ。従来、金正恩の世話をし夜伽をする若い女性は、1年に10人ずつ選抜されていたが、ここへ来て2倍の20人に増員したという。2014年にデニス・ロッドマンが訪朝した際に、彼は「世界最高の天国を見た」と言ったことがあるが、元山沖のヨットの上で多くの若くてきれいな女性に囲まれ、やりたい放題だったことを言っている。父親の金正日の料理師だった藤本健二が、金正日の乱れた性生活を暴露したことがあるが、金正日はそういうことが公にならないよう気を使っていた。ところが息子の金正恩は世間体を全く気にしていないのだ。もう1つは、人を殺すことへの衝動が目に余ることだ。叔父の張成澤(チャン・ソンテク)を処刑した頃は、周囲の批判が多かったため、金与正(キム・ヨジョン)や玄松月(ヒョン・ソンウォル)が金正恩の憤怒衝動を抑えようとしたし、金ジュエが登場した時も父親の殺人衝動を抑えるのに一役買っていた。しかし今や金ジュエをもってしても金正恩の殺人衝動を抑えられなくなっているのだ。例えば、金正恩の出かける時間に合わせて警戒し、準備するのが警護員の仕事だが、金正恩が予定以外の時間に突然表に出て、警護員らがリラックスしてタバコを吸ったりしているのを見て、いきなり彼らを処刑するという。公式行事の際にも、目に留まった者の行いが気に入らないと、すぐに処刑する。これらの悪癖のほかに、あの体型、あの体質では、酒タバコは良くないに決まっているが、止める気配は一切ない。狂気にブレーキがかからないのは、いよいよ死期が近づいたせいだろうか。
2025/8/24(日)「北朝鮮中央放送が白頭血統・金与正の映像を露骨にカット…誰の指示?!」
これまで北朝鮮のナンバー2とされてきた金与正だが、北朝鮮のメディアが彼女を露骨に無視し、彼女を白頭血統と見なすべきではないということを公然と発信し始めた。7月27日の戦勝節、朝鮮戦争に参加した老兵たちと党・政府の幹部が順番に握手する場面で、金与正の部分がカットされていた。テレビを見る人々もちょっとやりすぎだと思うぐらい、露骨なものだった。では、そのような指示をしたのは誰だろうか。金正恩か、或いは後継者に繋がる勢力か。先代の金正日にも妹・金京姫(キム・ギョンヒ)がいたが、彼女は金与正に比べれば何の権力もなかった。しかし金正恩の代になって、夫の張成澤が処刑されると金京姫も表舞台から姿を消してしまった。金与正はこれまで10年余り権力を欲しいままにしてきたが、今後、代替わりした後も金与正が権力を持ち続けるとすれば、それはまずい。また、金正恩にしても自分の亡き後に妹が貶められることになるより、今のうちに権力を奪っておいたほうが安心だろう。ただ、人一倍権勢欲の強い金与正がそのような筋書きを受け入れない可能性もあり、そうなると兄妹間に対立が生じることになる。いずれにせよ今後の推移を注視したい。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)