1月20日(月)「対北拡声器を南に向けてどうする?…金正恩がさぞ喜ぶだろう」
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する2回目の逮捕令状執行が迫る中、ラジオ番組に出演した改革新党の李俊錫(イ・ジュンソク)議員が休戦ラインに設置した対北拡声器を大統領官邸の前に持ってきて、大統領に投降するよう大音響で呼びかけてはどうかと発言した。30代の若さで国民の力の元代表となった李俊錫氏には、党の改革に活躍してくれるものと期待していたが、その期待は見事に裏切られた。尹錫悦氏の大統領候補時代にも尹氏をさんざん翻弄した挙句、大統領に当選した尹氏を羊頭狗肉と皮肉るなど、政治家としてはもとより人間としても問題の多い若者だ。その彼が、北朝鮮の人々を覚醒させるための対北拡声器放送を、こともあろうに大統領を逮捕するために使おうと発言するなど言語道断ではないか。
1月21日(火)「音沙汰のない金正恩に何があったか?」
金正恩が本人の誕生日である1月8日以来、2週間近く公式の場に姿を見せていない。彼の父も冬の寒い日に脳卒中で倒れたが、心血管系統の疾患を持つ金正恩にとっても極寒は体に応えるに違いない。昨年は金正恩の寿命は3年もたないという情報があったし、韓国の国家情報院が金正恩は麝香鹿の点滴を受けているという情報を発表したが、延命にも限界があるだろう。金正恩の別荘のある元山(ウォンサン)は比較的暖かいので家族とそこで過ごしているか、或いは緊急手術でも受けているのではないか。高層アパートが林立する平壌では暖房施設が充実していないため冷蔵アパートになってしまい、幹部クラスでもお湯を入れたペットボトルを抱いて寝るのだと言う。韓国では大統領が拘束される事態となっており、本来なら北朝鮮にとっては大騒ぎして宣伝するに違いないのに、そのような気配もない。もっとも、北朝鮮住民も、指導者の座を降りるべきは尹大統領ではなく金正恩だと言いたいところだろう。
1月22日(水)「北朝鮮のテレビに韓国国旗が初登場!住民は興味津々」
最近、金正恩の肝いりで制作されたテレビドラマに、なんと「太極旗(韓国国旗)」が登場し、北朝鮮住民を驚かせた。映画の中では人民軍が太極旗を破る場面が出てくる。太極旗は植民地時代にもあったのでお年寄りには覚えがあるだろうが、太極旗を見たこともなかった大部分の住民は興味深々だという。ドラマの題名は『72時間』という。北朝鮮では1950年6月25日午前3時に南から侵略が開始され、午前5時に金日成が反撃を命じてから3日目、つまり72時間でソウルを占領したとされている。その72時間の間に起きた実話を再現した映画だというが、もちろん朝鮮戦争を韓国が起こしたということからしてでたらめである。ドラマの中では金日成と共に戦った英雄をだらしない男として描いたり、金日成の指示に従わずに進撃した部隊が全滅する場面を臨場感満点に描き、首領の領導体系の重要さを示したが、同時に、常に北朝鮮軍が勝つ場面ばかりだったドラマに大敗の場面を映し出したことは、ある意味、金日成を卑下するものだ。結局、金日成より自分の方が優れており、もし今戦争が起きたなら、72時間よりはるかに速やかに南を占領できるという妄想を住民に植え付けるためのものだろう。ところで、なぜ今、朝鮮戦争ドラマなのか。我々脱北者団体は2016年に封切られた『仁川上陸作戦』という韓国映画のDVDを北朝鮮に大量に散布してきた。朝鮮戦争についての誤った事実と歴史観を正すためだったが、金正恩がこれに対抗して『72時間』を制作させたのだろう。
1月23日(木)「金正恩死亡説の真相は?!」
また金正恩死亡説が出回っている。2020年4月には米国CNNが金正恩危篤報道をし、在韓脱北元高官らもこれに同調しただけでなく、中国の国家安全部や台湾の情報局長も深刻な事態が起きていると発表したが、後日、金正恩はカムバックした。もっとも、当時、何事もなかったわけではなく、実際に金正恩が元山の別荘での休暇中に心筋梗塞を起こしステント手術を受けていたことが分かっている。2023年8月にも中国の瀋陽第一病院で緊急手術を受けている。この時の身体情報を基に中国安全部が金正恩の寿命は3年だと発表したのだった。それから1年半が経って、またしても2週間も姿を見せていない。尹大統領は弾劾訴追され、収監されたまま起訴され、トランプは大統領就任を迎えた今、金正恩にとってはチャンス到来であって、本来なら休んでいる場合ではないはずだ。だが、体重160km、高脂血症、糖尿、血管疾患、高血圧に喫煙、飲酒、無文別な性生活など、金正恩の身に何があってもおかしくないのも事実だ。様々な噂が広がる中、真相を知っているのは米国CIAぐらいだが、今後も注目していきたい。
1月24日(金)「保衛部も偵察総局も全部逮捕せよ!…」
中国政府が丹東に「北送事務所」という施設を設置した。ここでは、正式に中国国内で働いていてビザが切れた人を逮捕・収容し、北朝鮮に送還するのだという。労働者だけでなく保衛部や偵察総局など北朝鮮の国家機関から中国に出向してきた監視員らもビザが延長されず送還されているという。昨年下半期から中国政府は、不法入国した脱北者に対しては臨時居留証を発行して保護している一方で、就労、留学、観光などのビザを一切発行しておらず、ビザの延長も認めていない。長年の中朝関係の中でかつてなかったことだ。今週、第2次トランプ政権がスタートしたが、米国の対中国政策がこれからどう展開されていくのか、その際、北朝鮮の問題をどう解決するのかが台湾問題とともに重要な課題となってくる。
1月25日(土)「金正恩の健康異常説…これが決定的証拠だ!」
金正恩に何らかの異変があることは、ほぼ確実なようだ。24~25日、平壌で最高人民会議が開かれたが、金正恩が出席しなかっただけでなく、取り巻きの高官4人のほか党の要職、党中央委員会の部長クラスすべてが欠席だった。去年年初の最高人民会議には趙甬元(チョ・ヨンウォン)、金与正(キム・ヨジョン)、玄松月(ヒョン・ソンウォル)らも出席していた。今年出席していた朴テソン内閣総理、金徳訓(キム・ドクフン)党経済部長・党秘書、チョ・チュンヨン労働党軍需工業部長、朴チョンチョン党軍事委員らは、みな周辺的な人物だ。金正恩が出席しないことはこれまでにもしばしばあったが、そんな場合も出席することの多かった金与正さえも今回は不在だった。今年はトランプ大統領の再登場を迎えて、対米関係で発するべきメッセージは多いはずなのに、何の言及もない。金正恩と彼を取り巻く幹部、家族などの核心人物すべてが集まって、いったいどこで何をしているのだろうか。金正恩の身に何か起きたことは間違いないと思われる。
1月26日(日)「トランプ大統領が金正恩にしきりにラブコール…金正恩にはチャンスのはずだが」
米国のトランプ大統領が23日、フォックスニュースに出演して「金正恩はスマートガイで、狂信者ではない。冷静に考え冷静に行動する人間なので、核兵器を保有する彼と私は仲が良かったし、これまであらゆる問題は解決されてきた」と述べた。その直前には、「金正恩は私の復帰を歓迎するだろう、早く応えてくれ」と述べていた。フォックスニュースの司会者が「金正恩と会うつもりか」と尋ねると「もちろんだ、平壌に連絡しようと思う」と答えた。このようにトランプ大統領は金正恩に立て続けにラブコールを送ったのだ。過去の経験からすると、トランプが何か言えば、金正恩政権は即座に何らかの答えを返していたが、今回は何の反応もない。金正恩の立場からすれば、ロシア派兵で崖っぷちに追い詰められ、中国からはいじめられ、救いの手を期待できるのはトランプ大統領だけではないか。もちろん突き放される可能性もあるが。大統領に就任し、全世界のあらゆる情報を掌握しているトランプ大統領は、金正恩の近況について何か知っていて、わざと何度も呼びかけているのかもしれない。
「ピョンヤン24時」ダイジェストについて
姜哲煥氏のYouTubeチャンネルにおいて、日々韓国語で語られている最新のトピックスを日本語に要約して紹介する。
姜哲煥氏は、京都に暮らしていた祖父母と父が帰国事業で1963年に北朝鮮に渡り、1968年に平壌で生まれた。9歳の時から10年間、家族とともに悪名高い「耀徳(ヨドク)強制収容所」に収容されたが、奇跡的に釈放され、脱北後1992年に韓国に亡命。10年間の朝鮮日報記者を経て、現在はNGO団体「北朝鮮戦略センター」の代表。韓国、北朝鮮はじめ国内外に様々なレベルの情報源を持ち、信頼度の高い情報をいち早く発信している。「守る会」結成間もない時期に日本に招待し、各地で講演を行っていただくなど、「守る会」との縁が深い。
邦訳著書
『平壌の水槽 北朝鮮地獄の強制収容所』(淵弘訳、ポプラ社)
『北朝鮮脱出』(安赫との共著)上・下(池田菊敏訳、文藝春秋 のち文春文庫)
『さらば、収容所国家北朝鮮』(ザ・マサダ)