2010年8月11日
在中国日本総領事館保護下の脱北者の早期出国許可を求める声明
すでに報道でも明らかにされているように、中国瀋陽の日本総領事館に保護された脱北者(元北朝鮮帰国者、日本国籍者の配偶者及びその息子)が、中国政府の出国許可が出ないまま足止め状態になっています。その中には、すでに2年間も同館にとどまっている者もいます。
日本政府は、中国政府に対して繰り返し、粘り強く出国許可を働きかけていると聞いています。しかし複数の日本政府高官によれば、中国政府は日本政府に対し、出国を求めるのなら、今後日本政府は脱北者を保護しない旨の誓約書の提出を要求しているとのことです。
この事態に対し、外務省も、政治家も、中国と何らかの外交交渉をする際には、出国許可を求めてはいるようなのですが、事態は一向に改善されておりません。したがって現在、日本総領領事館は、脱北者の保護をしても中国政府からの出国許可の可能性が無いため、新たな脱北者受け入れを停止している状態です。
事態を重視する日本の人権・人道NGOである北朝鮮難民救援基金と北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会は、中国政府が速やかに日本定住を希望する脱北者の出国を認めるよう強く要求します。
中国が頑なに出国を認めず、難民条約の精神を尊重せず、理解しない態度をとり続けるならば、私たちは国際世論の協力を得て事態の解決を図る道を選択します。
さらに脱北者救援NGOは、逮捕される危険を承知の上でも、中国国内に地下鉄道のネットワークを作り、脱北者を安全圏に移動させるしか選択肢がありません。なぜなら、強制送還された脱北者たちが厳罰に処せられ、生命を失っている事例を多く知るからです。
もちろん、第3国への出国させるためには、大きな経費負担や拘束される危険は覚悟しなければなりません。そればかりか、出国先の第3国領事館には、ハングルの話せる担当者は配置されていないために、受け入れに困難を生じています。越えなければならない障害は高く、険しいものがあります。
問題は脱北者だけに限りません。北朝鮮に混乱が生じ、仮に拉致被害者などが出国する事態になったとしても、現在の中国政府の態度から、日本政府が保護に動くことは、かなり難しいと判断されます。
遺憾ながら、中国政府は、日本総領事館が脱北者を保護することを容認せず、かたくなな態度に終始しているため、日本政府もなんら有効な手が打てず、苦慮していると聞きます。来年は難民条約締結60周年の年ですが、中国自身も加盟、批准している難民条約の精神は、残念ながら無残にも踏みにじられているのです。
私達は難民保護の立場からも、また本来、日本の国家主権が尊重されるべき領事館の機能回復のためにも、このような事実を広く日本国民、並びに世界の人権に関心ある人々に知らせ、関係者に以下のことを訴えます。
第1に、日本国外務大臣に対して中国政府に対して事態解決のために、高官レベルでの協議、を行うことを求めます。
第2に、日本政府は、日本と同様に中国国内の韓国公館に長期滞在を強制されている脱北者の人権救済のために、韓国政府とも連携し、事態解決に動くことを期待します。
第3に、人権・人道NGOに対し事態解決のために、協力を呼びかけます。
第4に、民主主義と人権を基調とする価値観を有する在京諸国大使に対して事態解決へ影響力の行使を要請します。
第5に、国連の藩基文事務総長、国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて事態解決を要請します。
第6に、日本政府は、脱北者を多く保護できる日本領事館の機能強化(韓国語のできる担当官の配置など)を要請します。これは、拉致被害者救出のための情報収集としても有効に働くはずです。
以上
北朝鮮難民救援基金 理事長 加藤博
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会 代表 三浦小太郎
(旧サイトより転載:http://hrnk.trycomp.net/statement.php?eid=00018)
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