朝鮮学校無償化の政府方針に抗議する守る会声明

現在一部報道によれば、日本政府は、朝鮮高等学校の無償化を認める方針を定めたと報じられています。私達北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会は、この方針は、現在の朝鮮学校の誤った教育方針に日本政府が正当性を与えることになると考え、朝鮮学校無償化に抗議し方針の撤回を求めます。

私達は結成以来、北朝鮮帰国者、日本人配偶者の人権擁護のために力を尽くし、北朝鮮独裁政権による過酷な民衆への人権弾圧に強く抗議してまいりました。自由と人権、そしてマイノリテイの権利擁護の立場から、私達は在日コリアンが自らの文化や歴史を学ぶことは当然の権利と思いますし、民族差別をあおり、多様な価値観を認めないような偏狭な精神を断固拒否します。また、在日コリアンがハングルを学ぶ場として朝鮮学校がこれまで一定の役割を果たしてきたことも認めます。

しかし、現在も朝鮮高校において行われている歴史教育は、金日成・金正日独裁政権への絶対崇拝と、様々な現代史の捏造から成り立ち、朝鮮半島の現実の歴史を歪めた、驚くべき記述がなされています。

まず、朝鮮戦争について、北朝鮮が先に韓国に侵略したことは既に証明済みのことであるにもかかわらず、以下のように記載されております。

「米帝のそそのかしのもと、李承晩は1950年6月23日から38度線の共和国地域に集中的な砲射撃を加え、6月25日には全面戦争へと拡大した。(中略)尊敬する金日成主席様におかれては、会議で朝鮮人をみくびり刃向かう米国のやつらに朝鮮人の根性をみせてやらなければならないとおっしゃりながら、共和国警備隊と人民軍部隊に敵の武力侵攻を阻止し即時反攻撃にうつるよう命令をおくだしになった。」(現代朝鮮歴史 高級1 朝鮮学校教科書 79ページ;「星への歩み出版社」発行の日本語訳による)

また、先日訪日した金賢姫の大韓航空機事件についてはこのように書かれています。
「1987年11月28日イラクのバクダットを出発しソウルに向かった南朝鮮旅客機が、タイ・ミャンマー国境付近上空で失踪した事件。南朝鮮当局はこの事件を「北朝鮮工作員金賢姫」が引き起こしたとでっち上げ、大々的な反共和国騒動を繰り広げ、その女を第13代「大統領選挙」の前日に南朝鮮に移送することによって盧泰愚「当選」に有利な環境を整えた。」(現代朝鮮歴史 高級3 34ページ)

日本政府は、金賢姫を招請し、拉致被害者家族の方々との対面や、情報収集などを行いました。その金賢姫をでっち上げだとする記述が堂々と書かれている教科書を使っている学校に公費を投入することに、日本政府は何ら矛盾を感じないのでしょうか?

また、日本人拉致事件に対しては、
「2002年9月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は「拉致問題」を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった」(現代朝鮮歴史 高級3 122ページ)
と書かれ、総連は一言も謝罪せず、北朝鮮政府の責任は問わず、日本政府が差別主義をあおっているとする記述です。日本政府は拉致問題解決を求めつつ、同時に、この教科書をも認めるのでしょうか。このような歪んだ教育を施している学校の授業料を無償化するために国民の税金を投入するのは間違っていませんか。

このほかにも、この教科書は問題のある記述が山積しております。また、帰国者、日本人妻の受難などについては全く触れられていません。それは「様々な立場からの歴史の解釈」などというレベルではなく、北朝鮮独裁政権の捏造した「偽史」そのものなのです。

現在の北朝鮮は、国際テロを行い、政治犯強制収容所で無実の人々を虐殺し、自由も人権もない抑圧体制を敷き、飢餓に苦しむ国民を見殺しにして核ミサイル開発や軍拡を優先しています。このような体制を賞賛し犯罪を隠蔽する教科書を使っている朝鮮高等学校の教育は、いわばヒトラーを英雄として讃え、その犯罪を隠蔽しているのとおなじです。その学校に日本国民の税金を投入することは、自由、人権、民主主義を原則とするわが国の教育理念に反する行為であり、一番の犠牲者は、このような誤った価値観を注入される若い在日朝鮮人の青少年です。
私達は、以下のことを日本政府ならびに朝鮮学校に要請します。

1、日本政府は、朝鮮学校への無償化を行う方針を直ちに撤回し、無償化対象からはずすことを政府方針としてください。

2、朝鮮学校は、教育無償化を求めるならば、使われている歴史教科書を全面公開し、かつ、金日成、金正日親子の独裁体制の賛美と歴史の捏造をやめ、自由、人権、真の意味での民族教育を行ってください。

2010年8月5日

北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
代  表  三浦小太郎
副代表   山田文明
名誉代表 萩原 遼
    守る会ホームページ http://hrnk.trycomp.net/
    連絡先 三浦 E-mail miurakotarou@hotmail.com

(旧サイトより転載:http://hrnk.trycomp.net/statement.php?eid=00017)

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