貴国政府の脱北者7人を北朝鮮に強制送還した行為に強く抗議するとともに今後の脱北者への政策変更を要請いたします
私達は北朝鮮の人権問題に取り組む日本の市民団体です。 90年代半ばから、 強制収容所に代表される非人道的な抑圧体制と、 北朝鮮政府の誤った政策により引き起こされた飢餓から逃れるために、 多くの脱北者 (北朝鮮難民) が中朝国境を超えるようになりました。 貴国は、 彼らを基本的に不法越境者として逮捕、 強制送還しておりますが、 北朝鮮では送り返された脱北者に対し、 肉体的・精神的拷問を加え、 さらには日韓の救援団体やキリスト教団体と接触した場合、 また第3国への亡命を求めていた場合には、 収容所や著しい場合は処刑などの不当な処罰が加えられている事は、 多くの脱北者の証言により明らかであります。 彼らは基本的に、 国際機関によって保護されるべき政治難民であり、 貴国も批准する難民条約の精神からも、 貴国政府は彼らを保護する義務があるはずです。
しかし、 韓国の新聞 「朝鮮日報」 10月10日報道によれば、 「今年8月29日、 中国の山東省煙台市に位置する韓国国際学校に駆け込み、 韓国行きを希望した脱北者7人が最近北朝鮮に送還されていたことがわかった。 この7人は男性2人、 女性5人で、 このうち4人は家族だったということがわかっている。 (韓国) 外交部当局者は10日、 このような事実を確認する一方、 『現地の中国公安は韓国側の身柄の引き渡し要求にもかかわらず、 当日直ちに連行した後、 一か月後の9月29日北朝鮮に送還した』 と発表した。」 と報じられております。 さらに貴国は、 この理由として、 「脱北者たちが増えて、 国際学校の正常な業務がすすめられないため」 と説明したと報じておりますが、 このような非人道的発言は貴国の名誉を大いに損ねるものであります。 国際学校に彼らが滞在し業務が妨げられるというのならば、 直ちに北京のUNHCRに連絡を取り、 脱北者たちの保護、 調査を正統な国際機関に委ねるのが、 人権を尊重する国家の当然行うべき責務ではないでしょうか。
今回送還された脱北者は、 学校への駆け込みを行った時点で第3国亡命の意思は明瞭であり、 彼らを北朝鮮に強制送還すれば厳しく残酷な処罰が待ち受けている事は容易に想像できることです。 私達は自由と人権の精神、 そして生命への尊厳を尊重する立場から、 貴国に以下の抗議並びに要請を行うものであります。
1. 今回の脱北者7名の強制送還が貴国の批准する難民条約違反である事は明白です。 私達はこの行為に抗議し、 貴国政府の誠意ある謝罪と反省の弁を求めます。
2. 今後、 貴国国内の脱北者に対する逮捕、 強制送還、 並びに救援市民団体への妨害や不当逮捕を直ちに停止する事を求め、 同時に現在拘留中の脱北者、 救援団体活動家の即時釈放を求めます。
3. 貴国は脱北者を原則的に保護し、 UNHCRと緊密な連携を取りながら、 彼らが第3国への亡命を希望する場合はその希望を適えるよう、 適切な政策を取る事を求めます。
4. 以上のような、 世界人権宣言、 また難民条約の精神からして当然の脱北者保護政策を貴国政府が選択しない場合、 貴国が2008年北京オリンピックを開催する資格は大いに疑わしいものと見なされざるを得ません。 私達は脱北者への不当な弾圧がやまない限り、 貴国政府への抗議と北京オリンピック開催地変更を国際社会に訴え続けるものであります。
2005年10月15日
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会 山田 文明
北朝鮮難民救援基金 加藤 博
RENK (救え!北朝鮮の民衆・緊急行動ネットワーク)李 英和
(旧サイトからの転載:http://hrnk.trycomp.net/statement.php?eid=00003)
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