かるめぎ NO.24 1998.10.10

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 会報『かるめぎ』の過去号を、旧サイトから、順次こちらにアップしていきます。この機会に、過去の『かるめぎ』を通して、守る会の歩みを知っていただければ幸いです。

(旧サイトより転載:http://hrnk.trycomp.net/archive/karu24go.htm)

金正日の国防委員長就任は遺憾 「守る会」が声明発表

 9月7日、東京新宿区の早稲田奉仕園で開かれた記者会見で、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会の小川晴久共同代表は「金正日の国防委員長就任に際し、国内外に訴える」と題した会の声明(2貞別項)を発表しました。

声明は、金正日の国防委員長就任に「強い遺憾の意」を表明。その理由として、

1)帰国者を人質にとり真実を語れなくしている。

2)強制収容所を作り多数の帰国者を拘禁している。

3)北の国民と帰国者および日本人妻に出入国の自由を与えていない。

4)横田めぐみさんら日本人を拉致しながら、事実を否認している一をあ
 げています。

 声明はまた、「北朝鮮の収容所を解体させずに21世紀を迎えるとしたら、私たちは後世から大きな批判を受けくるでしよう」と述べています。

 この記者会見は、「民主無窮花」など元朝鮮総連系の在日8団体が「朝鮮民主主義人民共和国創建50周年に際し、共和国・総連の民主化と改革を要求する」として開かれました。「守る会」もこれらの団体に連帯して同席し、守る会独自の声明を披露しました。
 在日8団体の共同声明は、建国50年たつ北朝鮮が「人権も生存権もない独裁専制の金正日軍事王国になりはてた」と厳しく指摘し、「金正日政権の即時退陣」を要求しています。

 また「すべての帰国者に全面的な自由往来の保障」を求めています。

◇   ◇   ◇

 一方、守る会関西支部も9月15日、「金正日氏に求める。ミサイルでなく、人権を保障せよ!北朝群帰国者(日本人妻)に出入国の自由を与えよ!」と題した声明(3頁別項)を発表しました。

守る会が声明書発表  
声明書【金正日の国防委員長就任に際し、国内外に訴える】

 私たちは一九五九年暮れから-九八四年の間に、日本から北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に帰国した九万三千人の人々の生命と人権を守るために、また地獄のような山の中の強制収容所の解体を求めて、四年前から活動している市民団体です。

 このたび金正日は国防委員長に就任したと伝えられます。金日成の死後、金正日は軍が人民であり、国家であり、党であるという、すべてを軍事で処理する軍事独裁体制を固めていきました。国防委員長就任はその総仕上げに過ぎません。 

 この機会に、この軍事独裁体制が国内的には国際人権規約からの脱退を意味するほどひどい人権抑圧体制であることを強調しないわけにはいきません。金正日の国防委員長就任に際し、私たちは以下の理由から強い遺憾の意を表明します。 

一、金日成・金正日政権と朝鮮総連は、帰国者を人質にとり、帰国者や日本の家族が真実を語ることを抑圧し、金品だけは援助させるという、むごい人権政策を四十年近くとり続けていること。

二、北朝鮮の山の中には恐怖政治の象徴であり、地獄のような強制収容所が十いくつもあり、そこでは帰国者も多く犠牲者となり、今もなお多く囚えられていること。金正日は金日成の威信が低下するとして、この存在を徹底的に秘匿してきたが、収容所体験者姜哲煥・安赫蘇・安明哲・李順玉諸氏の勇気ある手記により、白日の下にさらされ、去る八月十九日採択の国連人権小委の決議も、虐待されている政治囚を数万と認定するところまできていること。

三、金日成・金正日政権は帰国者はもとより北の国民に出入国の自由を与えてこなかったこと。帰国者と日本人妻は親族訪問の自由すら四十年近くも奪われてきたこと。

四、横田めぐみさんを始め、多くの一般市民を北に拉致しながら、その事実と存在を一切否認するという、不誠実極まりない態度をとっていること。

 私たちはこの機会に改めて金正日にこれらの撤廃・改善を求めますが、その解決には世界の、国内外の強力な人権の声が必要です。

 併せて以下の四つを求めます。

 今年の十二月十日は、世界人権宣言五十周年の日です。北朝鮮の山の中の収容所の実態を知らずに、この日を迎えることは恥ずかしいことですし、北朝鮮の収容所を解体させずに、二十一世紀を迎えるとしたら、今日を生きる私たちは後世の歴史から大きな批判を受けることになるでしょう。

 世界人権宣言と瓜二つの恵まれた憲法をもつ日本に生きる者は、北朝鮮の人権状況を改善するために、とりわけ大きな責務があることを、最後に強調したいと思います。 

一九九八年九月七日
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
共同代表 小川晴久・金民柱・萩原遼
 

関西支部も声明  金正日氏に求める。ミサイルでなく、人権を保障せよ! 北朝鮮帰国者(日本人妻)に出入国の自由を与えよ!

一、すでに報道されているように、朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮と略す)が八月三十一日太平洋に向けて予告なしに弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮のその後の発表では人工衛星であるとしています。
 ミサイルであれ人工衛星であれ、これが日本に住むすべての人々の強い懸念と憂慮を引き起こしています。もしこれに核弾頭や生物・化学兵器が装着された場合のことを想定して多くの人々が恐怖を覚えていることも当然のことです。日本に住む私たちは、なんの事前連格もなしに隣国上空に発射した北朝鮮の今回の行為に強く抗議します。

 北朝鮮の行為は、何兆円もかかるミサイル防御網のTMDを導入しようとする人たちや、有事立法をつくりたい人たち、日本国憲法の平和条項を改悪したい人たちに口実を与え、鼓舞していることを金正日氏は知るべきです。こうした結果はあなたの国にとってもけっして得策ではないということを。

二、北朝鮮の行為がまた、日本の対北朝鮮感情を悪化させていることにも私たちは憂慮を表明します。
 在日朝鮮人子弟の通う学枚に脅迫が加えられたり、民族服を着ている女子生徒にいやがらせがおこなわれたりする例がいくつも報じられています。北朝鮮に怒りをもつことと、罪のない在日朝鮮人子弟に怒りをぶっつけることは別個の問題で、絶対にあってはならないことです。こうした思慮のない行為にも私たちは強く反対し警告します。

三、こうした怒りの背景は、日本政府が拉致された日本人の救出などにも毅然とした態度で臨まないことへのいらだちがあります。この怒りは日本政府に向けられるべきです。同時にその原因をつくりだしている北朝鮮政府に向けられるべきです。

 北朝鮮の出先機関である在日朝鮮総連が、北朝鮮の行為を擁護するだけで、一言の抗議もしないこともきわめて不可解です。かりに北朝鮮からミサイルが打ち込まれれば在日朝鮮人・韓国人も同じように危険にさらされるのです。在日朝鮮総連は、在日朝鮮人の利益を守るというなら進んで本国の政府に進言し、こうした行為をやめさせるよう努力するのは当然です。女子生徒の被害を訴えるだけでは説得力をもちません。

四、金正日政権は、今回の打ち上げを「わが国の自主権に属する問題で、他国が僭越に口をはさむべきでない」といっています。しかし発射にともなって重大な影響を受ける国と人々にたいし事前に説明し了解を求めることこそ国際間の良識ある態度です。
 国家の自主権をいうならば、その前に国民の基本的人権が尊重されなければなりません。三百万人餓死説も伝えられるなかで、食糧を求めて国を脱出する北朝鮮の国民が北朝鮮当局の手で容赦ない処罰をうけている事実が各方面から伝えられています。あなたの国では出国・入国という基本的人権すら保障されていないではありませんか。ミサイルや人工衛星よりも国民の食糧確保にまず資金を使うべきではないでしょうか。またわずかな不平不満を口にしただけでも地獄のような強制収容所に入れられた人々が何万人もいることが広く知られています。強制収容所解体こそがなににもまして急がれることを金正日氏は知るべきです。

五 私たちは、北朝鮮帰国者の生命と人権を守るために活動している市民団体として、この機会に改めて十万人の帰国者と六千人の日本人妻の日本への一時帰国を金正日氏に強く求めます。飢餓状態の帰国者を日本に呼んで腹一杯食べさせてやりたい、病気をなおしてやりたいという在日朝鮮人家族の要望は一刻の遅れも許されないほど切実です。ミサイルや人工衛星よりも出入国の自由を!

 以上の観点にたって、私たちは十月十七日に大阪で予定している「帰国者家族を励ます音楽と溝演の集い」を大成功させることが、北朝鮮の誤った軍事政策をただし「人道と人権という正義の声を高め、広く世論をおこす道であると確信します。 

一九九八年九月十五日
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会 関西支部

金正日独裁体制とテポドン発射が示す 軍事独裁と人権解放の必要性  佐伯浩明

 北朝鮮はさる九月五日、最高人民会議第十期第一回会議を開催し、金正日独裁の新体制を確立した。
 憲法の修正・増補を行うと同時に、金正日キム・ジョンイル総書記(58歳)を共和国国防委員会委員長に推戴(再任)し、洪成南ホン・ソンナム首相代理(74歳)を首相とする新たな国家指導機関を選出した。さらに国家主席制度ができる以前の国家元首相当の最高人民会議常任委員会委員長職を復活させ、金永南キム・ヨンナム・政治局員兼前外相(70歳)を同職に選出した。

 憲法修正の最大の特徴は、金正日国防委員会委員長が側近を身内や軍出身者、軍籍者で囲め、朝鮮労働党、朝鮮人民軍、内閣(今回の修正で政務院制度を改め、内閣制とした)を指導する「軍事独裁による非常時体制」を完成させたことだ。

 八月三十一日の人工衛星打ち上げで証明されたミサイル発射など攻撃能力の飛躍的向上と併せて「朝鮮半島の危機」は一層緊迫化しそうだ。

 修正憲法の序文は、金日成主席の業績をほめたたえる文で埋め尽くされ「朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法は、偉大な領袖金日正同志の主体的な国家建設思想と国家建設業績を法にした金日成憲法である」と規定する。
 スターリンやヒットラーのように個人独裁体制の強化が、指導者の神格化を伴って進められる典型がここにはある。

 産経新聞の黒田勝弘ソウル特派員は、金正日国防委員長が父をたたえ、国家主席ポストを避けたのは「父・金日成主席への『孝』を誇示し『徳のある指導者』として国民の忠誠を確保する意味」からだと分析している。

 しかし金永南委員長は、金正日国防委員長推戴演説で「国防委員長は国家の最高ポスト」と述べている。
 また国防委員会については、憲法が「国家主権の最高軍事指導機関であり(第100条)、国防委員長は、一切の武力を指揮、統率して、国防事業全般を指導する(102条)。国防委員会は、決定と令令を出す(104条)」と規定しており、北朝鮮では国防委員会が絶大な権力を担う機関として君臨していることをうかがわせる。
 国民の生活を犠牲にして、国防費にGDP(国民総生産)比の27%54億ドルを注ぎこむ非常事態体制は当分続きそうだ。民衆の末端に食料が届く国際食料支援がなければ、北朝鮮国民の飢餓と経済の疲弊はますます深刻化するだろう。

 人権規定については、修正憲法は「公民の基本権利と義務」を定めた第五章から「祖国と人民に背反することは最大の罪悪であり、法に従って厳重に処罰される」との規定を削除し、「公民は居住、旅行の自由を持つ」との項目を加える改善を行った。果たしてこの改善が実行に移されるかどうか、国際社会はより関心を寄せる必要がある。(佐伯浩明)

金正日軍事独裁体制の没落は不可避だ  萩原遼

 9月5日、北朝群の最高人民会議(国会)が4年半ぶりに開かれました。ちょうどその日、私は熱海で開かれた泊まり込みの学習会に参加していました。北朝鮮専門家が毎年一回行う一泊二日の学習会です。この日のテ―マは北朝鮮の農業問題ですが、みんなの関心は、金正日が国家主席に就くかどうか、でした。

 学習会の最中に、ある通信社からのファックスで最高人民会議の議題が三点、速報で入ってきました。1)憲法の修正・補充 2)国防委員会委員長の推戴 3)国家指導機関の選挙。ファックスを受けとった私が読みあげ、みんなに披露しました。読みながら、金正日の国家主席就任はないと私は直感しました。金正日は国防委員長の肩書きで国家を牛耳るのだと。

 以前から私が思っていた通りに運んだので、自分でも驚いたくらいです。金正日が国家主席には就かないと考えた、私の一つの根拠はこうです。

 韓国に亡命した黄長燁ファン・ジャンヨプ氏が、手土産に持ってきた金正日の96年12月7日の秘密演説です。この中で金正日は、餓死者の出る食料危機の広がりに触れながら、「私は経済問題にはタッチしない。なぜならば、首領様(金日成のこと)が私に経済に手をつけると党と軍の指導がおろそかになるとおっしゃった。だからやらない。」と言ってるのです。
 卑怯な逃げ口上です。人民の苦しみを解決することこそ国家の長たる者の最大の責務ではないでしょうか。この男は、困難を前にして逃げまくるだろうと思ったのです。案の定そうなりました。
 憲法を修正して主席制を無くしてしまったのです。主席に就くと当然めんどうな行政をやらねばならないからです。金正日が一番欲しがるのは、自分を守ってくれる国防委員長のポストです。同時に国のトップでもありたい。そこで考えられたのが、国防委員長は「国家の最高職責」だという定義です。これを述べたのは推戴演説をした副首相で外相の金永南です。

 しかし今回、修正された憲法のどこにも国防委員長が国家のトップだという規定はありません。憲法にないのに国家の最高の座に就く。これをクーデターと言わずして他にどんな呼び方があるのでしょうか。金正日は軍の力で勝手に国家元首の地位に就き、文字通りの軍事独裁体制をしいたのです。

 韓国の朴正照が“維新憲法”で独裁を頂点に押し上げたのが1972年。それから7年後の1979年、彼は腹心に射殺されました。他の外国でも軍事独裁体制が栄えたためしはありません。

 今回の金正日のあがきを見て、彼の没落は早まったと思いました。そして金正日に引導を漬すのは、もしかしたら金永南ではないか、という気もしました。こわい男です。私は1973年の赤旗ピョンヤン特派員時代に彼によって殺されかけたのです。このことは紙数が尽きたので書けませんが、11月に出る私の新著『北朝鮮に消えた友と私の物語』をお読み下さい。

(萩原 遼)

北朝鮮は武力をちらつかせるのを止めよ ~在日の立場から~ 宋允復

 今回のミサイル騒動は、日本国民の意識を変える触媒の役割を果たしたのではないか。
 これまでアメリカの傘に守られつつ、日本国民の多くは、憲法9条をめぐる言葉遊びに終始し、平和御題目主義の安逸を貪ってきたが、現実の脅威を身近なものとして認識することになった。

 北朝鮮は、アメリカの軛(くびき)のもとで経済にのみ専念してきた政治小国の日本にはこうした振る舞いをしても打撃を被ることはないと高をくくっているのだろうが、いずれ大きな代償を払うことになるのではないかと懸念する。

 自分達の振る舞いによって、窮状に手を差し延べようと努力していた日本の政治家を含む良心的な人々に仇しただけではない。

 日本のような豊かな民主主義国においてひとたび民意が定まり、力を集中すれば、人民の活力の枯渇した貧しい全体主義国の太刀打ちできるところではなくなる。

 ときあたかも日本では、戦後の罪悪史観、謝罪外交を嫌気し、民族の自然な衿持を取り戻そうという気運が高まりつつある。いずれ軍事においても「普通の国」を志向することになるだろう。北朝鮮は、武力をちらつかせる軽薄な振る舞いは止めるべきだ。道義的にもなんらの正当性もない。

 ビルマのアウンサン廟爆弾テロ、大韓航空機爆破事件のときもそうだったが、北朝鮮が騒動を起こすたびに在日コリアンはなにかと影響を被むることになる。ことさらに「いや、ほんとにけしからんです」などと批判的見解を有している旨を周囲の人間に表明する必要に迫られる。煩わしいことだ。しかし、比較を絶して哀れなのは飢えに苦しむ北朝鮮の一般民衆である。

 羅津ラソン先峰ソンボンという北朝鮮の経済解放区域の試みを担っていたテクノクラートが粛清されたと聞く。曲がりなりにも開放路線を志向している人々と、それを危険視す勢カとの力関係が反映したのものだろう。

 常に外部に、また内部にも敵を想定し続けることで人民を縛り付け、権力を維持しているというあの体制のもとでは、人民は道具にしかすぎない。数百万の自国民が餓死しているというのに、さらに食糧援助の中断その他を自ら招いているわけで、実行を指示した連中は、人民の苦しみが増すことに痛痒を感じていないのではないかと思われても仕方がない。

 金正日が「忠誠度の高い3割だけが生き残れば国は再興できる」とうそぶいているなどという話がそれらしく伝えられているが、実際にやっていることからすれば、さもありなんということになる。

 同族としてはまことに心苦しいが、あの体制そのものがもはや存在悪あり、国家主権をうんぬんするに値しない体のものであると認定せざるを得ない。

 日本の人々には、自国の防衛はもとより肝要なことだが、同じ時代に生きる人々の苦しみを除くという視点からも未来の方向性を探っていただきたいものだ。
 それには、やはりあの体制のもとで苦しんでいる多くの人々の実状を知っていただく必要があろう。アウシエビツツは過去の話ではない。

(宋允復)

核ミサイルであれ、人工衛星であれ  三浦小太郎

 北朝鮮のミサイルが日本の上空を越えていった。その後、北朝鮮は人工衛星の打ち上げだったと宣言、アメリカ、中国、ロシアはあいまいな態度をとり続けている。そして、それ以降の日本国内で起こった不毛な議論と提案は、北朝鮮をどうとらえ、いかに彼の地の国民を飢えと弾圧から救い出すかという視点を全く感じさせないものであった。

 まず、ミサイルか人工衛星かという議論ほど馬鹿げたものは無い。2つの点から見て、今回の打ち上げがどちらのものであったとしても許し難い暴挙である。

 第一点は、まず日本に住む我々にとって、予告無く発射されたものが何であれ、全日空を初めとする我が国の上空を飛び交う旅客機に万が一にも衝突すれば大惨事が予想された。又、仮に人口衛星であった場合、既に軍事力のみで国を成り立たせている北朝鮮が、軍事のために利用しようとしていることは明らかである。

 恐らくあのミサイル発射は全世界の武器バイヤーに向けての宣伝効果をもねらったものであり、北朝鮮の核軍拡体制は国家全体を収容所、軍隊、軍事産業の3つによって構成するという、史上まれに見る「唯軍事国家体制」を近い将来実現しかねない危機をはらむ。

 第2点は、北朝鮮国内で飢餓に苦しむ国民、帰国者にとって、このミサイル発射ほど、彼らの悲劇に全く無関心な金正日政権の本質を示したものは無い。現在の数百万人の蛾死者を出した責任は明らかに金日成、金正日政権の悪政・失政に有る。

 しかし今回、政権の座に着いた金正日がまず行ったことは、その過ちを認めて国民に救済の手を差し伸べることではなく、自らを讃えさせるためのお決まりの軍事パレードと、最低の軍事宣伝・パフォーマンスとしてのミサイル発射であった。これほど北朝鮮国民をばかにした話があろうか。
 核ミサイルによって世界に脅しをかけるよりも、人工衛星から金正日を讃える歌を流して世界に恥じをさらすよりも、まずその分の費用を国民の救済に回せ! 

 今回、日本政府の対応の一部にも、金正日と同じ「唯軍事主義」のかけらが感じられたことを、私は日本国民として憂える。政治家や防衛庁の一部は、日本も独自の偵察衛星を持つことをまず提案した。それが防衛上必要なものであるならば私は別に反対はしないが、まず政府が北朝鮮の暴挙と軍拡核開発政策、そして国民、帰国者への「弾圧、虐殺」に断固批判、抗議することが第一である。
 そして北朝鮮現政権が日朝両国国民の共通の敵であるという認識を、今回のミサイルは再確認させてくれたことを決っして忘れるべきではない。

(三浦小太郎)

街頭行動と学習会 東京

ビラまき10月24日(土)正午~1時(集合11:45)
    JR御茶水駅(神田寄り出口)
         10月24日(土)午後2時~5時
10月の学習会 「曺浩平さんの手紙を読む」
          講師 三浦小太郎氏

ミサイルには人権の思想で  小川晴久

 去る8月31日北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が打ち上げた物体は人工衛星であったという修正がアメリカと韓国の両政府で行われているが、三陸沖を越えて発射された事実は、ミサイル試射と報道されても自然であり、内外とりわけ日本国内を震撼させ、防衛論議を沸騰させている。
 有事立法化(新ガイドラインの制定)を一気に仕上げるのに手を貸す北の行為に強い憤りを感ぜずにはおれない。

 しかし私はこの憤りの根幹にあるものが生命を守る人権の思想であることを確認し、人権の思想で北朝鮮のミサイルに対処すべきことを以下二つの理由で内外に広く呼びかけたい。今回の打ち上げが、人工衛星とその失敗であったとしても、三陸沖を越えて発射された事実に鑑みて、その本質を長距離ミサイル試射ととらえた上での立論である。
                                            1 今回の発射事件は、絶対的平和主義の限界をハッキリ証明したという声がきこえてくる。
 しかし人類は歴史を積みあげており、第二次大戦後に世界人権宣言と日本国憲法第9条を人類は生み出している。

 ここで私たちは今年12月10日50年を迎える世界人権宣言が、第二次世界大戦後なぜいち早くつくられたか、その理由を考えてみる必要がある。
 戦争をひきおこす者は、まず自国内の人権を破壊する、したがって戦争を防止するには人権を確立し、または回復する必要がある、そのために世界人権宣言はいち早くつくられたのだ、と。私はこのことを3年前韓国のある人権運動家から指摘され、世界人権宣言に初めて開眼できた。

 こうして戦争防止と人権の思想の関係がハッキリしてくると、日本国憲法が戦争放棄条項(第9条)をもつことと基本的人権条項を豊かにもっている、両者の密接な関係がわかってきた。世界人権宣言と日本国憲法が双子の柿妹であり、両者の絆が第9条であることも。

 しかし、世界人権宣言とその具体化である二つの国際人権規約はますますその評価を高めているのに、逆に第9条に対する評価は低くなっている。おかしな事態であるが、しかし一国だけが第9条をもっていて非武装というのも不自然であり、北朝鮮のミサイル試射が日本国内を震撼させた理由も、またここにある。

 昨年8月に出たある文庫本の解説(H・Gウェルズ『解放された世界』浜野輝解説、岩波文庫)で、H・Gウェルズが世界人権宣言や日本国憲法第9条の生みの親であるという説を知って、私はびっくりすると共に深い感銘を受けた。
 ウェルズは主権国家の廃絶と世界政府、世界兵力という構想をもっていた。戸締まり論者には、ウェルズは人権の思想と世界兵力(国連軍でもなく、自衛隊でもない)で第9条を守る思想家であったことを伝えたい。ウェルズの思想が今急いで論議されることも、この場で訴えたい。

2 北朝鮮のミサイルに対処するもう一つの道は、北朝鮮の山の中に10ケ所余りあるといわれる地獄のような強制収容所を世界が直視し、その解消を北朝鮮政府に強く求めることである。
 北朝鮮の強制収容所の実態は収容所体験者の手記で、韓国や日本国内だけでなく、アメリカやヨーロッパに徐々に知られるようになった。アメリカの代表的政治誌『ジャーナル オブ デモクラシー』は去る7月、初めて「北朝鮮強制収容所からの声」という特集を組み、収容所体験者の生の声を伝えた。
 去る8月19日ジュネーブの国連人権小委員会は決議文を採択し、数万人単位の政治囚の虐待を認め、世界に対しては食料援助と人権改善要求の結合を、北朝鮮に対しては人権査察の受け入れを求めた。(賛成19,反対4,棄権1)

 北朝鮮の民衆の口を封じてきたのは強制収容所の存在である。体制批判をすれば家族ぐるみ山の中の収容所に送られるからである。強制収容所が最大の恥部であることを熱知していた金日成親子は、国家を挙げてそれを秘匿し続けてきた。

 アメリカは人権外交を北朝鮮にも向け、強制収容所の解消を求めるべきである。北朝鮮の内部から人権の思想でミサイルの根拠を崩していくこと、この方法の大切さと有効さを、世界は、日本は真剣に考えるときである。世界人権宣言の思想に学んで。

(小川晴久)〔東京大学教授、東アジア思想史専攻〕
=投稿(朝日新聞「論壇」ボツ原稿)
‘98.9.18投函、9.26付不採用通知

この人にきく 寺井一通さん(49歳)

ゆうべまた夢を見ました
新潟の港から 帰国船に乗り
五色のテープとどよめきに
祖国に向かった兄さんの夢(中略)
あの日から三〇年
どこでどうして死んだのですか夢の中の兄さんは
あの日の若いままでした
(「妹からの手紙」原詩 荻原遼 作詞、作曲 寺井一通)

 帰国運動についての最も核心を突く歌を作ってくださったシャンソン歌手、寺井一通さん。10.17大阪集会にも東京から駆けつけ、その澄んだ歌声を聞かせてくれることでしょう。

―寺井さんとシャンソンとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

寺井 イブ・モンタンですね。当時僕は大学一年生だったんですけれど、四谷のボヌールという喫茶店で、モンタンの「枯れ葉」がかかっていたんです。歌い手になりたいという思いはそれまでもずっとあったんですが、モンタンの歌を聴いて、もう全身がわなわなと震えました.これを歌うために自分は生まれてきたんだ、これに出会うためにこれまで模索してきたんだ、そんな感動に包まれて、その場でマスターに歌詞カードをコピーしてもらって、仏文科でしたから一生懸命日本語に訳したんですよ.彼の歌、語り口、声、すべてに感動しました。

―モンタンは社会的にもさまざまな発言、行動をしていますね。
そういうところにも共感したのでしょうか。

寺井 いや、そういう理屈からじゃないんです。モンタンのすべての発言に共感したわけでは有りませんし。たとえば今一番好きに歌手はシャルル・アズナブールですけど、彼は別に政治や社会のことは歌ってないけど、男と女の愛情を歌わせたら本当に素晴らしい。もちろんシャンソンこだわっているわけじゃなくて、いい歌はすべて好きです。

―帰国運動について、当時はどうお考えでしたか。

寺井 実は当時はほとんど関心がなかったんです。時々ニュースとか、かいま見るていどでした。北朝鮮についても同じで、数年前荻原さんと出会うまでは殆ど知識も関心も有りませんでしたね。

 ただ自分自身ですごく心に引っかかっていることがあるんです。歌声運動が盛んだったころ、「つつじの花」という歌があって、「灯火」(当時の有名な歌声喫茶)でよく歌われていたんです。ところが、これは金日成を称える歌だったんですね。それをなんの矛盾もなく歌っていた。これは厳しく言えば自分の歌手としての汚点なんですよ。そして、歌の意味、背景というものを何も考えずにいた自分とはいったい何だったのか,今でも心の傷になっています。

―今,北朝鮮についてはどうお考えですか.

寺井 限られたニュースしか入って来ませんが、とにかく自由がない、人権が守られてない。独裁国家で苦しんでいる国民,帰国者は本当に苦しいだろうなと思います。

―大阪の集会では、帰国者を歌った寺井さんの歌が大きく期待されています。

寺井 「妹からの手紙」は、僕にとってこの帰国者の問題へのすべての思いが歌われているんです。そして,「風」という歌は、「手紙」に続くものなんです。この二つの歌を歌おう,今はそれしか考えていないんです。

―心から楽しみにしています。

金正日体制とテポドンと人権回復の声

1998年8月2日 アベックで北朝鮮に拉致された日本人の蓮池薫さん・奥戸祐木子さんの救出を呼びかけた新潟県・柏崎の集いで、拉致日本人の救出を求めて、政府の毅然とした粘り強い外交と、報道機関の世論喚起や先導の使命を強く訴えるとともに、一刻も早く再会できるよう、各界、各組繊、各団体、各市民がそれぞれの役割を果たし、それぞれの立場で全力を尽くすよう訴えるアピールを発表した。

8月29日 「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の小川晴久代表ら一行は、東京JR渋谷駅頭で、北朝鮮帰国者、拉致日本人、強制収容所の人々の人権擁護と人権解放を訴えて第一回のデモと街頭行動を行った。

8月31日 政府、北朝鮮のミサイル発射を発表。日本を飛び越え三陸沖に着弾の可能性。日本、事前に北朝鮮に外交ルートを通じ、実験中止を求めたが無視された。

 野中官房長官会見。「今回の実験が行われたことは、極めて遺憾である。わが国の漁船が多数活動している海域で、具体的事前通告なしに行われたことは極めて危険な行為だ」「今回の発射実験はとうてい受け入れられない。・・・なぜこのような行動をとったのか、日朝間のこれからの観点からも誠に残念だ」

31目深夜 防衛庁の河尻融防衛審議官会見。「三陸沖東方数百kmの太平洋公海上に着弾した可能性。テポドンの可能性もあるが、現時点では確認されていない」

9月1日 政府対応を夕方協議。小渕首相、高村外相、額賀防衛庁長官、野中官房長 官。官房長官、政府対応方針を発表。前文「ミサイル発射実験はわが国の安全保障に直接かかわることで極めて憂慮。北東アジアの平和と安定および大量破壊兵器の不拡散の観点からも極めて遺憾。対北朝鮮政策を再検討し、きぜんとした対応をとる」。

【日米韓協議】日米間のハイレベルの意見と情報交換。日米韓三者協議のレベルを上げ、早急に開催など。

【国連対応】国連安保理および総会で問題を提起する可能性を探る。

【日朝関係】朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)支援の進行を米韓両国との協議のうえで見合わせる。北朝鮮にミサイルの開発・輸出の中止を求める。「無条件で応じる用意がある」としてきた国交正常化交渉の再開、食料支援は当面、見合わせる。

【わが国の対応】情報会議開催など連絡体制強化、画像衛星活用の調査推進、戦域ミサイル防衛(TMD)システムの技術確立について検討維続、新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)関連法案の早期成立、承認を期待。

小渕首相、記者会見で「国民も大変不安を感じているだろうから、政府として断固たる 厳しい対応をする」。

小渕首札、韓国の千容宅国防柏と会談。千氏「テポドンは周辺諸国に脅威になりうる。

日韓両国は緊密に対応したい」。首相「まったく同感」

小渕首相指示で、認識の共有のため安全保障議員懇談会を開催。高村外相が経過説明。

森喜朗自民党幹事長会見。「ゆゆしき事態であり、強い怒りをもって厳重に抗議する。

北東アジアの平和と安定に重大な脅威を与え、国際社会全体に緊張をもたらす暴挙だ。国威を発揚しようとする狙いなら、実に愚かな行動」

1日 海上自衛隊、一段目ブースターが落下予想点の能登半島沖と二段目と弾頭部分の落下予想点の三陸沖東方約500kmの海上で着弾確認できず。

1日 ニューヨーク、米朝高官協議、北側代表現れず流会。

1日 中国外務省朱邦造報道局長会見。「各方面が協議を通じて妥当な問題解決を図り、朝鮮半島の平和と安定を維持するよう望む」

1日 韓国政府、統一関係閣僚会議開催。ミサイル発射について「深刻な憂慮」、「韓国のみならず周辺諸国にも直接的な脅威になる」。朴智元大統領スポークスマン。「驚きを禁じ得ない。北はミサイル開発を即時中止し、国際杓なミサイル非拡散の努力に加わることを促す」と声明の一方、「太陽政策」の維持を確認。

1日 豪州のダウナー外相声明。「深刻な懸念」これ以上の挑発的行動やミサイル技術の轍出中止を求める。事前通告無しも非難。

2日 政府対応方針の追加措置、チャーター便(平壌一名古屋)の運行許可を取り消し。

2日 朝鮮中央通信によるアジア太平洋平和委員会スポークスマン談話。「日本ではこの数日、われわれが長距離ミサイル発射実験を行ったとして、あたかも自分の家の柱でも倒れたかのように騒いでいる。・・・実験は自主権に属する問題として、われわれがわきまえて処理する問題である。日本が僭越にあれこれ口出しする問題ではない。・・・日本が事態を直視して軽挙妄動せず、われわれに対する時代錯誤的な敵視政策を直ちに中止するよう警告する」

1日 モスクワ訪問中のベル大統領特別補佐官(国家安全保障担当)とセイモア国家安全保障会議(NSC)上級部長(大量破壊兵器拡散担当)記者会見。大陸間弾道弾(ICBM)テポドン2号の開発を3年後の完成目指し進行中。

2日 米上院本会議は、北朝鮮に対する重油供給に厳しい条件を付する内容(政府に、北朝鮮が核兵器開発を進めていないことを証明するよう求める)としたIMF(国際通貨基金)資金拠出法修正法案を可決。

3日午前の参議院本会議、午後の衆院本会議で北朝群のミサイル発射に抗議決議を全会一致で採択。「わが国領土に落下する可能性を一顧だにせぬ、国際常識無視の無謀で極めて危険な行為。・・・極めて許しがたい」

 小渕首相、前原誠司氏(民主)へ「誘導弾攻撃への防御に、他の手段がないと認められるとき、誘導する基地をたたくことは法理論的には自衛の範囲に含まれ可能」と答弁。

3日 聯合通信によると、ニューヨークで再開された米朝高官協議で金柱寛外務次官が、カートマン朝鮮半島平和協議担当大使にミサイル開発放棄の代償として10億ドルを要求。米側「受け入れられない」。

3日 韓国の康仁徳統一院長官の議会発言。北朝鮮の97年の貿易額は9億ドル。年間100基のスカツド・ミサイルの生産が可能で、テポドン2号はエンジン燃焼テストを続行中。

4日 朝鮮中央放送、北朝鮮が31日、三段式のロケットで人工衛星の打ち上げに成功と発表。人工衛星は咸鏡北道花台郡舞水端里の発射場から打ち上げられ、4分53秒後に軌道に乗り「金日成将軍の歌」や「金正日将軍の歌」などを27メガヘルツの電波で地上に送っている。
 ロケットは一段目が発射場から253k離れた日本海に、2段目は1646キロ離れた太平洋に落下し、3段目によって軌道に乗った衛星は、地球近地点で218・82k、遠地点が6978・2kの楕円形軌道を185分8秒の周期で地球の周囲を回っている。

 衛星打ち上げの成功は「建国50周年を迎えた社会主義の勝利・・・偉大な指導者・金日正同志の賢明な指導による」成果。「100%われわれの知恵と技術で開発された」

4日 夕ス通信によると、ロシア宇宙観測センター当局者は31日に打ち上げられた衛星が地球周回軌道に乗っていることを確認した。

4日 RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)東京は東京・日本記者クラブで講演中の緒方貞子国連難民高等弁務官を訪ね、中国吉林省延辺朝鮮族自治州に逃げてきた北朝鮮難民を保護するために 難民を強制送還しないよう中国政府に対して緊急要請する 中国政府に対し、難民を「政治難民」「飢餓難民」として認定し、第三国への再定住を含む人道的な保護を与えるよう要請する 難民支援を国際機関や関係各国政府に要請する一の三点を求めた要請書を同弁務官事務所員に手渡した。

5日 北朝鮮は、第10期最高人民会議第一回会議を万寿台議事堂で開き、最高指導者、金正日総書記(56歳)を共和国国防委員会に推戴したと発表。党、国家、軍の全権を完全掌捏。

 この日の議題は、憲法修正・増補、国防委員会委員長の推戴 国家指導機関の選出。金永南・政治局員兼前外相が国家元首相当の最高人民会議常任委員会委員長に就任。病気療養中の姜成山首相に代わって洪成南首相代理(74歳)が新首相に、自南淳が新外相にそれぞれ就任。

7日 「守る会」は金正日の国防委員長就任にあたり、軍事独裁体制下の北朝鮮で行われている、あらゆる人権弾圧政策の撤廃と改善を求め、さらに世界は北に対する無条件の食料支援を改め、人権改善を求めるべき米国は北についても人権外交を貫くべき。日本政府も日赤も人権の立場に立ち、日本人拉致者の解放、日本人妻の無条件里帰りと帰国者の自由往来実現のために奮闘すべき。マスコミは北のむごい人質政策を日常的に報道すべき一との声明を発表した。

 声明は12月10日が世界人権宣言50周年にあたることを想起し「北朝鮮の収容所を解体させずに、21世紀を迎えるとしたら、今日を生きる私たちは後世の歴史家から大きな批判を受けることになるでしよう。世界人権宣言と瓜二つの恵まれた憲法をもつ日本に生きる者は、北朝鮮の人権状況を改善するために、とりわけ大きな義務があることを、最後に強調したいと思います」と結んだ。

 「北朝鮮の民主化と在日の明日を考える会・民主無窮花」「在日朝鮮人子弟の民族教育を考える懇親会」「総連の民主化を要求する同志会・総民同」など8団体は、金正日の国防委員会委員長就任にあたり「狂気極まるファッショ政権の出現は祖国の平和統一に反するばかりではなく、歴史の流れに逆行する反民族的な暴挙であり、在日同胞は絶対に許すことはできない」と、軍事独裁体制の出現を厳しく批判。
〇金正日独裁政権の即刻退陣
〇特権階級の帰国者だけの自由往来ではなく、すべての帰国者に自由往来を保障せよ
〇北朝鮮は国際人権規約(B規約)からの脱退を撤回し、国民の人権と生存権を保障せよ
〇金正日は南北和解に関する合意書に基づき即刻、対話のテーブルに着き、往来の自由と一千万離散家族の再開を実現せよ
〇朝鮮総連の一切の干渉、民族教育への不当な干渉と犯罪的な学校施設の収奪は許せない。在日公共物を収奪した財産などを即刻返済せよ
〇民団と総連は在日同胞のため、新しい世代の未来と幸せのため虚心に協議対話せよ
――の六点を求める声明を発した。

14日 米国務省のルービン報道宮の記者会見。「われわれは、北朝鮮が非常に小さな人工衛星を打ち上げようとしたが、軌道に乗せることに失敗したとの結論にいたった。・・・米国の同盟国に対する脅威と受け止めている。ミサイルの能力については分析中だが、二度とあってはならないことだ」

14日 日米韓局長協議が米国務省で開かれ、94年の米朝核合意路線を順守、推進していくことを確認した。

15日 「北朝鮮難民救援基金」(代表・中平健吉弁護士、事務局長・李洋秀イ・ヤンス氏)が「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」から分離独立し発足総会を東京で開催。

李氏は「自由な往来と居住は人権の根幹。国連人権宣言50周年の今年、北朝鮮難民を救うには国連が中朝国境付近に難民センターを作るのが望ましい。」と訴えた。連絡先電話兼FAX03・3815・8127。

15日 朝鮮中央通信によると、日本の北朝鮮非難について北朝鮮外務省スポークスマンが警告を声明。 日本が反共和国キャンペーンに訴える限り、共和国は日本との国交を正常化しない 日本が過去の犯罪について謝罪と補償を回避するなら、そのすべての結果について日本が完全に責任を負うことになる。共和国は日本の反共和国キャンペーン行為に対し全面的かつ強力な自衛措置をもって断固として対応する 在日朝鮮人に対するいかなる敵対行為も日本当局の反共和国行為とみなす。

いよいよ開幕 音楽と講演の集い 推進グループ代表からのおねがい

 会員ならびにご支援下さっているみなさま、私たちの集いに多大のご協力をいただき厚くお礼申しあげます。7月末から関西支部で準備してきました集いもあと数日後に迫りました。
 ご出演の朴聖姫さん、寺井一通さんもすばらしい歌をみなさんにご披露したいと、最後の仕上げに入っておられます。

 800人の広い会場をうずめることによって北朝鮮に渡った帰国者と、日本に住んでおられるご家族の労苦に連帯し心をひとつにするまたとない機会です。帰国者と日本人妻を日本に一時帰国させるための〝返り船〟を一日も早くだせるように、みんなでカを合わせていく第一歩となるものです。

 つきましては、以下のおねがいを申し上げます。

1 チケットを広めて下さった方々に、当日かならず会場に足を運んで下さるよう声をかけて下さい。電話やFAXなどでもおすすめ下さい。

2.ご参加下さる方はさらに一人でも誘いあっておこし下さい。   

3.会員でまだチケットを手にしておられない方は当日前売券の価格(3000円)で入場できます。受付でお申しこみ下さい。

4.時間に多少でも余裕のある方は早目に会場におこしいただき、受付、案内などのお手伝いをぜひおねがいします。(会場は朝から借りています)

 それでは、みなさま方と会場でお目にかかれることを楽しみにしております。

平成10年10月10日  集い推進グループ代表 山田文明

朝日新聞1998(平成10年)年10月6日 一時里帰りの実現を 家族を励ます集い

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に日本から渡ったまま、出入国がままならない在日朝鮮人や日本人配偶者の一時里帰り実現を訴えようと、十七日午後二時から中央区北浜東のエルおおさかで、「帰国者家族を励ます音楽と講演の集い」が開かれる。シャンソン歌手の朴聖姫さん、寺井一通さんが北朝鮮帰国者のことを歌った曲を披露し、作家の萩原透さんが講演する。「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会関西支部」の主催。

 一九五九年に始まった「帰国事業」で渡った在日朝鮮人は九万人、日本人妻は六千人といわれる。昨年、日本人妻の里帰りが実現したが、日朝関係悪化で中断したままだ。「守る会」の共同代表でもある萩原さんは「ミサイル騒ぎの後、日本の対北朝鮮感情が悪くなり軍備強化に向かっている傾向を危ぐする。むしろ日本は帰国者の人権に関心を持つべきだ」と訴える。
 前売り三千円。問い合わせは同支部(0729・9O・2887)へ。

大阪民主新聞 1998年10月4日

 北朝鮮に渡った九万人の在日朝鮮人(日本人妻)の一時帰国を実現させようと、「帰国者家族を励ます音楽と講演の集い」が十七日(土)午後二時、中央区のエル・シアターで開かれます。主催は北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会。

 北朝鮮への帰国第一船が日本をたったのは一九五九年。これまで六千人の日本人妻を含む九万三千人の在日朝鮮人が北に渡りましたが、家族、親族、友人のいる日本に一度も戻れないままの状態が続いています。帰国者のなかには、強制収容所で死んだ人や行方不明者も数多くいることも伝え
られ、厳しい食料難で餓死者も出ており、日本の家族らに救いを求める手紙が何万通と届いているといいます。

 今世の集いは、帰国者とその家族の実情に目を向け、支え合う人たちのネットワークをつくろうと取り組まれるもの。

 当日は、帰国者問題を歌いつづけてきた歌手の朴聖姫(パク・ソンヒ)さん、寺井一通さんの歌、ノンフィクション作家萩原遼さん(同会共同代表)の講演のほか、帰国者家族から実情が報告されます。

 会場へは地下鉄・京阪天満橋駅下車。3000円(当日1000円増)。問い合わせは0729・90・2887山田文明さんまで。

小人数で奮闘!台風下の初のデモ、初のビラまき

 8月29日(土)午前11時頃から約40分間、NHK近くをよぎり、渋谷駅を経て、宮の下公園に戻るコースで初のデモを敢行しました。あいにくの台風下という悪コンディションでしたが、運よくデモ中は雨が小休止でした。参加者が11名という主催者側としては予想外の小人数のデモも渋谷署のパトカーを先導とし、守る会ののぼりを4本たて、ゼッケンをつけ、35のシュプレヒコールを用意して、頑張りました。シュプレヒコールは次の通りです。

①北朝鮮絶望収容所を解体せよ。
②9万3千人の帰国者の生命と人権を守れ。
③9万3千人の帰国者の自由往来を認めろ。
④日本人妻の里帰りを継続せよ。
⑤無条件里帰りを実現せよ。
⑥北朝鮮は出入国の権利を認めよ。
⑦十数万の無実の政治囚を釈放せよ。
⑧北朝鮮は人質政策をやめろ。
⑨すべての被拉致者を家族の元に返せ。
⑬北朝鮮は人権査察を認めよ。
⑫罪のない子供を収容所に送るな。
⑫家族ぐるみ収容所に送るな。
⑬日本のマスコミは北朝鮮の人権問題を報道せよ。
⑱NHKは北朝鮮の人権問題をとりあげろ。
⑮日赤は帰国者の安否調査に真剣にとりくめ。
⑩日赤は帰国事業の責任をとれ。
⑰帰国運動を進めた政党・団体は人権問題にとりくめ。

 守る会の4本ののぼりも意思表示してくれました。「広めよう!日本から世界に!北朝鮮の人権弾圧と強制収容所の実態を!北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」黄色地に緑色で染めたのぼりです。鮮(あざや)かでした。

デモのあと、渋谷駅頭で300枚のチラシをまき、1時間訴えました。

第3回東京学習会報告  三浦小太郎

 去る8月23日、喫茶ベラミにて第4回の守る会学習会が開催された。講師は運営委員の佐伯浩明氏。テーマは、「北朝鮮の人権回復に向けて」。

 まず、佐伯氏は、北朝鮮では貧困と飢餓に国民が苦しみ、そして人権弾圧が繰り広げられていることは周知の事実だが、まず資料に当たって、どの程度の被害が出ているのか、国民がどんな常態に置かれているのかを、事実と確かな情報に基づいて認識することが必要と述べた。
 また、その情報はそれが信頼できるものならば、RENK、民主無窮花、救う会そして脱北基金など、立場は違っても北朝鮮の人権問題に関心をもっている全ての運動団体で共有されていなければならない、運動体同士の相互の連絡と討論をもっと強めて行かなくてはならないと述べた。

 佐伯氏が一次資料として提出したのは、今回はかって「カルメギ」紙上でも萩原共同代表によって要約されて紹介された、韓国仏教会助け合い本部による中朝国境難民の面談調査報告書「最近北朝鮮食料難の実態」である。

 北朝鮮国内の飢蛾については、直接の自由な取材はほとんど不可能。今のところは脱北難民の証言が一次資料に最も近いものと考えられる。それによれば、北のいう「洪水、水害」のあった95年から、難民のうち27%が家族から死者を出しており、特に老人と子供という、自らでは自分を守れない人々に集中している。死亡の直接の原因は結核やチフスも多いが、つまり予防もできず、栄養状態も最悪、そして満足な家も着るものも無い事から来る、「餓死」が続出していると思われる。

 又、現在生存している北朝鮮国民も、その多くは栄養失調か病気にかかっており(食べ物さえ有れば直る病気も、北では死に直結しているのであろう)国民は売れる持ち物は全て売りつくし、ついには木の皮や草の根で飢えをしのいでいる。難民の証言、帰国者の家族からの情報、亡命した黄書記の発言などを比較してもこれらの悲劇的な報告が事実であることは明らかであり、300万人の餓死者のほかにも、国全体が飢餓と病に満ちているようだと述べた。

 さて、ここで問題になるのは、このような北朝鮮に対して食糧援助をすべきか否かである。佐伯氏は難しい問題だとしながらも、この飢餓状態を救い、なおかつ独裁者の懐を肥やさずに直接国民に届くような方法を、知恵を出し合って開拓して行くしか無いと述べ、一つの例として国連や民間機閲による徹底的な管理のもとでの援助を提案した。

 最後に、戦後日本は戦前の悪しき面を否定するのに懸命で、迷信や蒙昧さの現れだ、非科学的だと言って宗教的なものを全否定してしまった。人権思想の根本には、キリスト教、仏教、儒教など、全ての偉大な宗教には言葉は違っても「博愛」「救い」の精神が無くてはならないのではないかと結び、人権思想と最良の意味での宗教心の結び付きが今こそ必要であると訴えた。

(三浦小太郎)

祝辞 ~北朝鮮料理専門店『北韓閣』開業に寄せて~

 守る会で講演して下さった姜哲煥氏ら北朝鮮からの亡命者が自立のための店をオープンしました。守る令から祝辞を送りました。

祝  辞
 安赫氏、姜哲煥氏、チョ・オョンチョル前金日成総合大学教授他5名の北朝鮮からの帰順者の皆様が力を合わせ、北朝鮮料理専門店『北韓閣』を開業するとの朗報に接し、私たち日本の北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会会員一同心からお祝い申し上げます。

 また、このIMF不況の中、敢えて新しい事業に挑戦する志に敬意を表します。北から南へと命を懸けて多くの試練に耐え、困難を乗り越えたその勇気と知恵と気概とを持ってすれば事業を成功させ、大きく発展すると信じています。そして、この快挙は韓国に帰順した多くの方々への勇気と希
望を与えることでしょう。

 多くのお客様に愛され慕われる店造りに励んでください。そして是非日本にも支店を出すように頑張って下さい。

 できれば韓国に赴き、直接お祝いの言葉を伝えたいのですが、叶いません。日本の地から皆様に精一杯の声援を送ります。

 最後に、開業するにあたりお力添えして下さった関係者の皆様にお礼を申し上げますと共に、今後とも北朝鮮料理専門店『北韓閣』発展のためにご尽力下さいますようお願い致します。

1998年9月25日 北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会

白帆
レールモントフ  1814~1841 ロシア
丁 奎燦(チョン ギュチャン)訳

蒼き海 狭霧の中
白帆 ひとり白く
遠き国に何をか求め
辺境の故国に何をか見捨てん
帆桁のしなり 耳を裂く音
波踊り 風は高唱る
ああ 幸を求めず
   幸から逃げず
帆の下には 瑠璃明晰なる閃光
見上げれば 黄金の太陽光線
暴挙の心は 嵐を乞う 恰も
嵐の中にこそ 安穏があるかの如く

<訳者註>
 ネクラーソフはレールモントフの『白帆』をさして、総てのロシアの詩の中で自分の最も愛好する詩であると謳っています。(訳者は元大阪朝群高校ロシア語教師)

編集後記

▼台風や雨つづきのあとさわやかな秋晴れもみられる日々となりました。お元気でお過ごしのことと思います。9月号の発行が大きくずれこみましたことお詫びいたします。そのため10月号との合併号となりました。なにとぞご諒承いただけますよう心からお願いいたします。

▼今号は、8月31日北朝鮮によるミサイル(あるいは人工衛星)の打ち上げと、9月5日の金正日新体制の出帆という新しい事態にさいし特集を組みました。共同代表と編集部員はじめ会員各位からの力のこもった文章をいただきました。また毎号のせている「守る会と北の人権状況」の年表は、上記の事態を正確につかむため、通常より大幅に誌面を割きました。これからもひきつづきこの問題を追っていくつもりです。

▼特集を中心にすえたため、いつものせている「帰国者からの手紙」などがすべて次号送りとなりました。これもご諒承下さい。

▼元大阪朝鮮学校の教師の丁奎燦氏からレールモントフの詩「白帆」の訳詩が寄せられました。
「嵐の中にこそ安穏がある」という一節を力をこめてロシア語と日本語で読んで下さいました。丁氏のご決意のあらわれと思います。厚くお礼申しあげます。 (萩原)

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